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第87回 社会福祉法人祥水園 阪合部CLASS 管理者 松本 昇さん

始まりは譲り受けた古民家から。
阪合部CLASSが目指す「当たり前の福祉」

左から3番目:松本昇さん(祥水園特別養護老人ホーム・水社水がたり施設長・社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・介護支援専門員)

土塀に囲まれた広い敷地に建つ築100年以上の古民家は、「暮らす」と「CLASS」を掛け合わせた地域交流拠点「阪合部(さかあいべ)CLASS」として、2022年に生まれ変わりました。
メディアでは「子ども第三の居場所」として紹介されることが多い阪合部CLASSですが、目指す先は、子どもも高齢者も地域住民も自然につながる「ごちゃまぜ」の地域づくり。
その原点には、「介護や福祉を暮らしの中に当たり前にしたい」という思いがありました。古民家との出会いから地域とのつながり、そして未来への思いまで。
阪合部CLASSの歩みについて、管理者の松本昇さんにお話を伺いました。

「地域の福祉のために」から始まった企画

ーまず「阪合部CLASS」ができたきっかけを教えてください。

コロナ禍の頃、祥水園(高齢者福祉施設)が元診療所だったこの古民家を譲り受けまして。「地域の福祉のために活用してほしい」という思いを受け、ここで何ができるだろうと考えたのが始まりです。「介護や福祉をもっと暮らしの中に当たり前にあるものにしたい。」そんな思いから「阪合部CLASS」というプロジェクトが生まれました。

ー「介護や福祉を暮らしの中に当たり前に」とはどのような思いなのでしょうか。

地域の希薄化といいますか、子育てを一人で抱えるお母さんや、家に閉じこもる高齢者・・・。そういった方達を地域で支え合える環境があれば、子育て世代は孤立せず、高齢者も住み慣れた地域で暮らし続けられると思うんです。そうした思いから僕達自身も、以前から「地域に出たい」と考え、入居者さんの「行きたい」「やってみたい」という希望にはできる限り応えてきました。その中で見えてきたのが身体的なサポートだけでなく、「地域へ出る事への不安」や「自信の無さ」といった精神的なハードルを下げることの大切さでした。

ー「阪合部CLASS」をつくるうえで大切にしていたことはありますか。

「ごちゃまぜにつくろう」ということですかね。

 

ー「ごちゃまぜ」?ですか。

はい。高齢者だから、子どもだから、障害があるから、地域の人だから。そういう区別ではなく、みんなが自然に交わる場所にしたかったんです。子どもは高齢者から知恵や文化を教わる、高齢者は子どもたちから元気をもらう。誰かが支えるだけでも、支えられるだけでもなく、お互いが支え合える関係をつくる。そんな「ごちゃまぜ」をつくりたかったんです。

 

地域のみんなで育てた古民家

ー初めてこの古民家をご覧になったときはどんな印象でしたか。

正直、「どうしよう・・・」でした(笑)。 広い庭に段差だらけの建物。「ここで何かできるんやろ」って感じで。掃除を始めてもさっと一拭きで雑巾が真っ黒で(笑)、なかなか手強かったですねぇ。
それに、これまで地域との繋がりがなかった施設の職員が、急に出入りし始めたので「ここで何するんやろ」っていう地域の皆さんの警戒心も感じました。そんな時、隣の古澤さんが「大丈夫か?」って声をかけてくださったんです。その一言がきっかけで少しずつ地域との繋がりができていきました。

ーこの古民家をどんな場所にしたいと考えながら改修を進めましたか。

「静」と「動」のバランスというか、にぎやかに過ごせる場所だけでなく、一人になれる場所や落ち着ける場所もあえて作りました。子ども同士の関係や近所付き合い、人それぞれ得意、不得意があって、それが理由でここに来ることを諦めてほしくなかったからです。別棟にもあえてキッチンをつくったり、離れにも居場所をつくったりして、それでいてどこにいてもお互いの気配を感じられるよう、設計段階から何度も話し合いました。

ー地域の皆さんと活動を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

この古民家を譲り受けた後、まず地域の皆さんと『サミット』を開きました。そこで『ここがどんな場所になってほしいか』『地域の宝物は何か』などを自由に話していただいたことが、地域とのつながりを深めるきっかけになりました。「養殖所を作ろう」「10キロ痩せたいわ(笑)」なんて声まで飛び出して、この地域がどれだけ愛されてるのかがすごく伝わってきたんです。じゃあもう一度、この地域をみんなの手で、みんなの大好きな場所にしようー。そうして始まったのが多世代交流イベント「よってきいや」です。地域の高齢者から昔の知恵や文化や教わりながら楽しもうというイベントなんです。

 

 

ー「よってきいや」の内容はどのように企画しているのですか。

思いつきです(笑)。「夏やなぁ。何する?」そんな会話から始まるのが多いですね。壁を塗ったり、野草を探したり、かまどでご飯を炊いたり、あと、お餅つき。お餅つきとなると、「あんこ作ったろ、きなこ作ったろ」とか、おじいちゃん、おばあちゃん張り切ってくれます(笑)。
特別なイベントというより「暮らし」の延長なんです。そうすると地域のおじいちゃん、おばあちゃんが自然と先生になってくれるんです。障子が破れたら「張り方知らんやろ」と教えてくれますし、野草を見つけたら「これは食べられるで」って教えてくれます。
僕達も初めてここに来た時、知らないことだらけでしたが、不便だからこそ「教えて」が生まれ、その積み重ねが地域とのつながりになっていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「子ども第三の居場所」が生まれた理由

―「子ども第三の居場所」という活動を始めた背景には、どのような子どもたちの現状があったのでしょうか。

お風呂はシャワーだけ、夕食は菓子パンで済ませる、放課後はスクールバスで帰って交友関係は学校の中だけになりがちです。地域で遊ぶ機会や生活習慣を学ぶ機会が減ったまま大人になったら、その生活が次の世代にも引き継がれてしまうかもしれないことに危機感みたいなものを感じました。それなら僕たちが地域の方から教わったことを今度は子どもたちへ伝えて、次の世代へつなげることができたらと思いました。

― その思いを、どのように現在の「子ども第三の居場所」という形につなげていったのでしょうか。

「よってきいや」など地域での活動を続ける中で、「ここが子どもたちにとっても大好きな場所になれば」という思いが強くなりました。そんな時、日本財団の「子ども第三の居場所」事業を知り、「この場所なら自分たちがやりたいことを実現できる」と考えて応募し、現在の形になりました。

 

ー「子ども第三の居場所」で子どもたちはどのように過ごしているのでしょうか。

平日は放課後から開所していて、月・水・金は午後8時まで、火・木は午後6時半まで、長期休暇などは朝8時半から開所しています。イメージとしては食事・お風呂付の学童という感じで、学校や家庭だけでは経験できないことを通して生活習慣や考える力を身に付けてもらいたいと考えています。

 

ー例えばどのようなことですか。

食事はメニューを考えるところから片付けまで子どもたちと一緒にします。包丁や火の使い方だけでなく、「いただきます」の意味や食事の楽しさ、生活習慣も自然に身に付けてもらえたらと思っています。

 

ー放課後の過ごし方、例えば、まず宿題をするなどのルールはありますか。

宿題をする子もいれば、先に遊ぶ子もいます。全部終わらせる子もいれば「残りはお母さんとやる」と決めて帰る子もいます。

 

― 子どもたち自身の判断を大切にされているんですね。

本人に任せてます。「先に宿題しなさい」とかは言わないようにしていて、遊び始めたら「今日は先に遊ぶんや」と声をかけるくらいです。遊んでる途中で「やっぱり宿題してくる」って自分で切り替える子もいますし、「先にやっといたらよかった」って思うことも経験だと思うので。ま、僕も宿題より遊ぶのが先の子どもでしたから(笑)。

ー子供達を支えるスタッフはどんな方ですか。

祥水園のスタッフに加えて、地域の元保育士さん4人にも協力していただいてます。地域の雇用にもつながっていますし、僕達も本当に助けられています。外遊びが得意なスタッフもいれば、料理が得意なスタッフもいるので、その場にいるスタッフがそれぞれの得意なことを生かして子どもたちと関わっています。

 

 

 

 

ー「阪合部クラス」の活動の中で印象に残っている出来事はありますか。

一番最初に声をかけてくださった古澤さんの言葉です。地域の皆さんと夜に集まって意見交換をしたとき、古沢さんが言ったんです。「生きててよかった。」って。「もう隠居して終わるんやって思ってた。でも『古澤さん、古澤さん』って頼られて、子どもたちにもいろんなことを教えられる。長生きして、生きててよかった」。その言葉を聞いたとき、本当にうれしかったですね。こういうことをするために地域に出てきたんだと思いました。ひとりの人をそんな気持ちにできたことが何より嬉しかったです。

 

支える側・支えられる側を超えて

ー高齢者がここで子供達と関わることでどのような変化がありますか。

施設の中ではどうしても僕達は「介護する側」、高齢者は「介護される側」という関係になりがちです。でも地域へ出たり、この古民家のような昔ながらの道具や自分達が知っている暮らしの知恵に触れると、「そんなことも知らんのか、これはな・・・」って高齢者が教える側、要するに受け身じゃなくなるんです。

 

ー子どもたちにはどんな変化がありますか。

核家族化が進んで接する機会が減ってきた高齢者と子どもがここで一緒になることで、子どもたちは「高齢者には優しくしよう」とか「困っている人がいたら手伝おう」と自分で感じ取り考えるようになります。ピザを焼いたときも、「あのおじいちゃん、まだ食べてないから持って行ってくる」とか、「お箸よりスプーンのほうがいいんちゃう?」とか。子どもたちなりに気づいたりするんですよね。誰かに教えられたからではなく、相手を思いやる気持ちが自然と表れるというか。そうした経験が、大人になったとき、高齢者を支えることを特別ではなく当たり前に感じられることにつながってほしいと思います。

ー地域へ出たことでスタッフの皆さんも学ぶことが多かったのですね。

本当に毎日です。地域の皆さんから教えていただくことも多いですし、子どもたちから学ぶこともたくさんあります。

「子どもだから」「高齢者だから」と分けてしまいがちですが、経験の差はあっても一人ひとり違う経験を積んできた「一人の人」として、その人が感じることや考えることに触れるたびに学びがあります。

 

 

 

地域に根づき、次の地域へ。

― 今では地域の皆さんにとっても大切な場所になっていますね。

そうですね。目指していた「地域の居場所」「地域の拠点」というのをメインに子どもたちの課題に向きあう一方で、「最近は子どもの声を聞こえなくなって寂しい」という地域の声もありました。それらがうまく重なったことで地域の皆さんも「子どもたちのためなら」と力を貸してくれるようになりました。
「よってきいや」も4年目になり、第二土曜に開かれることが地域に定着してきました。なので平日に開いてると、「今日は何で開いてるん?」って聞かれることもあるくらいです(笑)。

ー今後、活動をどのように広げていきたいと考えていますか。

どう広がるんでしょうね(笑) この場所が地域からいただいたものだからこそ、いつか地域の皆さんが主体となって盛り上げていってくれる場所になればそれが一番だと思っています。そして阪合部だけでなく「うちの近くにもこんな場所があったらいいのに」という声にいつかこたえられればと思います。

― そのために、今課題に感じていることはありますか。

「こども第三の居場所」の認知度がまだまだ低いことです。建物が塀に囲まれていることもあって、「中で何をしてるのかわからへん」「入りづらかった」という声をいただくこともありました。行政や学校へのチラシ配布、SNSでの発信もしていますが、「阪合部は少し遠い」「子ども第三の居場所という言葉自体を知らない」という方もまだ多いです。
最初はやっぱり口コミが大事だと思っていますので、今ここへ来てくれている子どもたちが一番の宣伝部長です(笑)。
まずは気軽に一歩を踏み出してもらえるような工夫をしていきたいですね。
それから平日午前中の活用方法も考えていきたいです。地域のためにまだできることがあると思いますし、今もまだ手が届いていない子どもたちへどうつなげていけるかも課題だと思っています。

 

ー子どもたちが大人になった時「阪合部CLASSの経験」がどのように残っていてほしいですか。

子どもたちに何を残したいかというより、「僕たち大人が、子どもたちに『あんな大人になりたい』と思ってもらえる存在でおらんとあかんよな」っていうのは、スタッフともよく話しています。ここでの出会いが、子どもたちが新しい一歩を踏み出すきっかけに、そして「困っている人を支えることは特別なことじゃない」と自然に思える大人になってくれたらうれしいですね。だからこそ、まずは僕たち自身がそんな背中を見せ続けていきたいと思っています。

 

ー松本さん、本日はありがとうございました。

社会福祉法人祥水園
子ども第三の居場所
阪合部CLASS
住  所 奈良県五條市中町112
電  話 070-1260-4174(松本)

 

 


☆スタッフHのすぽっとwrite☆

放課後時間にお邪魔し、「それでは・・・」と取材を始めると、ボーン、ボーン・・・と柱時計が鳴りました。取材も終盤、再び鳴った柱時計の音に耳が向き、昔、父が手巻きしていた振り子時計を思い出しました。尋ねてみると、やっぱり手巻き式。
ボーン、ボーン、ボーン・・・?夕方にしては鳴る回数が多いことに二人して気づくと
「巻くだけで時間合わせてないな~。ハハハ」と笑う松本さん。
そのおおらかさが、この場所の居心地の良さを、そのまま表しているように感じました。

「ここで何ができるんやろ」から始まった阪合部CLASS。取材を終えるころには「ここなら何でもできそう」と感じたインタビューでした。

 

第69回 Cafeことほぎ 桝田小百合さん 園田ひとみさん 森本早苗さん

ここが「繋がり」の場所であれる幸せ お客様も私達も

重伝建五條新町通りの起業家支援施設「大野屋」で前身の「町家カフェゆるり」を引き継ぎ再スタートした「caféことほぎ」。古民家を改装したお店は重厚で風格ある外観、梁や柱、また格子戸越しに入る光、見える眺め等、日本の伝統的な美しさがあふれている。そんなカフェを日替わりで?営業する3名の女性スタッフにインタビューさせていただきました。

 

来てみたらここでした

―「町家カフェ ゆるり」を引き継がれた経緯について聞かせてください
園田ひとみさん 以下 園田さん)「ゆるり」は社会福祉法人正和会が営業していました。5年間営業させてもらったんですが、正和会の本業の方が忙しくなってきたということもあり一旦5年という区切りで撤退しましょうということになりました。私達は正和会の「カフェ担当」で「ゆるり」の時からのスタッフだったんですが、撤退すると聞いてとても残念に思いました。顔馴染みのお客様もいてくださいましたし、ここがまた空き家(空きスペース)になってしまうな・・・って。そこで3人で話合って、正和会から離れて自分達だけでやってみようかということになり、正和会に相談し承諾いただきました。それで店名を「ことほぎ」と変えさせてもらって再スタートしました。

―では皆さんはもともと正和会の職員さんだったんですか?
桝田小百合さん 以下 桝田さん)いえ、私はハローワークで「カフェのスタッフ募集」という求人を見て応募したんです。そこで正和会というお名前を見たものの、正和会さん自身がカフェを始めるとか、場所がここだとも思ってなくて、多分、正和会の施設内にカフェがあって、そこで働くのかなって思ってて。それで来てみたらここで働くんだって分かって笑。

園田さん)
私もそんな感じだったような・・・笑。

ーでは、皆さんは「ゆるり」のスタッフ募集がきっかけでお知り合いになったんですね。以前からカフェのお仕事に興味があったんですか?
桝田さん)そうですね、みんな接客業の経験があるので。

―ゆるりのスタッフとして働き始めて、当時どんなことを感じましたか?
園田さん)あ、こういう形(起業家支援施設内での営業)の経営なんだと分かりました。今までの経験のあるカフェとは違って、色々制約がある(カフェスペースで提供できるメニューの制限、営業日が決まっている等)ことがわかりました。その中でも自分の今までの経験を生かしてお仕事させてもらおうと思いました。

―前身の「ゆるり」と現在の「ことほぎ」、何か違いはありますか?
皆さん)そんなに大きな違いはないですね。

園田さん)
自由にできる部分があることですね。今までは五條市の規約の中のさらに正和会の規約の中での営業でしたが、今は例えば、自分が今日はこのメニューにしようと思えばそれができるとか。それ以外は特に違いはなくて、だからこそといいますか「ゆるり」時代のお客様が引き続き来てくださるのでそれがとても有難いですね。「ゆるり」を始めた頃は観光客を含めそんなにお客様も来てくれなかったんですが、5年間でこのお店のことを知っていただけて徐々にお客様が増えてきました。「ゆるり」の5年間があったからです。名前は変わりましたが、以前と変わらずお馴染みのスタッフが引き続きお待ちしていますので・・・とお客様には伝えています。 

―「ことほぎ」という店名の由来は?
園田さん)3人で候補を出し合い、ずらっと並べた名前をいくつかに絞りました。その中で「ことほぎ」という言葉は「寿ぐ(ことほぐ)」というおめでたい言葉だし、響きも良いなと。おめでたい言葉で少しでも新町通りの活性化につながればってことで「ことほぎ」に決めました。

 

2つの顔

―ことほぎは「日によって店主が替わり、「meguruめぐる」と「musubiむすび」2つの顔をもつcafé」だとうかがいました。そのあたりについて聞かせてください。
桝田さん)「ことほぎ」として再スタートするにあたって、それぞれの両立していく仕事や家庭の事情を考えるとここの規約通りに(定休日(月曜日)以外は必ず開店)お店の営業を続ける自信がなかったんですよね。私は家が農園なのでその仕事と、このカフェの仕事、そして介護などもありますし・・・

森本早苗さん 以下森本さん)
私はお二人のサポートという形で働かせてもらっています。

桝田さん)
それぞれの事情を踏まえると、二人で交替制にすれば無理なく営業を続けられるんじゃないかってことで。でもどうしても無理な時は森本さんがサポートしてくれるので、3人で協力してこのスタイルでやっています。それと、それぞれがちょっと違ったメニューを出したいとか、多分そこも分かれてくると思ったので、お互いを高め合うため、また経営上や食材の管理等、別々にした方がやりやすいんじゃないかってことでこのスタイルにしました。

森本さん)お二人が急用でお店に出られないときのサポートというかたちでお手伝いさせてもらってるんですが、私はケーキ等を作る方の経験はないので、下準備しておいてくれたケーキにトッピングをしたり、飲み物を作ってお出ししたりしています。今日は桝田さん、園田さんいるかなと思ってお越しいただいた方には申し訳ないんですけどね。

―3人でフォローしあって営業されてるんですね。
桝田さん)そうですね。個人経営ではなく市の規約のもとの営業ということで、ここで一緒に働きそのあたりを理解、共有している私達で一緒にお店をやっていきませんかってとこからスタートしたので、互いにフォローしあえてるかなと思います。

―「musubiむすび」「meguruめぐる」のそれぞれの特徴や思いを聞かせてください。
桝田さん(musubiむすび)家業が柿・梅農家なのでそれを使ったものでいきたいなと思っています。ただ、柿、梅の時期は家業も当然収穫で一番忙しい時期なのでそこがネックでして・・・。
五條市の方って柿は生で食べるのがいちばんって思ってる方、多いと思うんです。五條市でも柿をメインにしたケーキや、スイーツを出されてるとこってあまりないんです。お店に来てくださる方には「ここら辺に柿売ってるとこないの?」って結構聞かれるんです。例えば駅からここまでの道中にはその案内をできるところがないので選果場を案内するんですが、そしたら選果場へ行った帰りにここへ寄って柿をつかったスイーツを食べてくれるんですよね。「柿を使ったものを食べれるお店がないのよ」って言われて、あ、それやったらここでそれをお出しして、その美味しさを分かってもらえるのがいちばんいいなぁって思って。五條市の人をはじめ多くの人に柿ってこうやって食べたら美味しいんだよってことを知ってもらいたいですし、五條市の活性化には柿をもっと宣伝したらいいんじゃないかと思っています。柿は割とご年配の方が好まれるので、若者にももっと知ってほしいなって思いますね。

―例えばどんな食べ方があるんですか?
桝田さん)生で食べるにしても、ヨーグルトに入れたりされる方はいらっしゃるかもしれないですけど、例えば、柿はクリームチーズとすごく相性がいいですし、あと、ここでは柿プリンや柿スムージーもお出ししています。生で食べるにしてもパフェにしてお出しするなど、五條の方にも知ってほしい美味しい食べ方を発信していきたいと思っています。

園田さん(meguruめぐる)私は柿や梅を桝田さんのところから分けてもらって、それをアレンジしたものをお出ししていますが、どうしてもよく似たものになってしまいます。ですので私は五條市で獲れる美味しいイチゴや桃、マスカットや梨といった果物を使ってちょっと違うものもやってみようと思っています。あと、栗なども取り入れたものも考案中です。桝田さんの「musubiむすび」とは違う特色をあえて出していきたいな・・・と思っています。

ー最近、モンブランなども話題になってますよね。ぜひ、栗を使ったスイーツも考案してほしいです。
桝田さん)柿農家の私は、廃棄されるような柿がいちばん美味しいと思っています。少し傷があるものはそこから甘味が増しますし、既に赤く色づき今から市場に出せない柿はその時が一番甘味みのピークだったりします。五條市の人は柿を袋や箱にいっぱいもらえたりってことも普通にあるので、それで十分って思ってしまうのかもしれません。広報で柿のスイーツを紹介させてもらってますが、どれだけの方に興味を持ってもらえてるんかなって思います。難しいですね。柿を五條市に発信したいのか、五條市以外の方に発信したいのか・・・、そこが揺れるところです。

園田さん)柿が大好きで毎年、柿の季節になると大阪からお越しになるリピーターさんもいらっしゃいますし、若い方でも柿が好きって言ってくださる方もいますけどね。やはり市外、県外から来ていただく方が多いです。

―定番のシフォンケーキの他に夏はかき氷も人気だったそうですね。
園田さん)奈良市の方でかき氷がブームになってきてましたし、年々夏の暑さが増してきたのもあってかき氷を始めました。シロップにこだわって特色を出していこうということで、柿、梅のほかに苺や桃のシロップを手作りし、徐々に種類を増やしていきました。すもものシロップもできて好評いただきました。

―柿や梅、すもものシロップのかき氷なんて、食べたことないです。よくある夏祭りとかのかき氷とは違うんですね。
桝田さん)そうですね。できたら五條産、できなくても奈良県産でいきたいというのがこだわりです。とっても美味しいのに廃棄されてしまう果実も、シロップ等、違ったかたちに加工することでまた美味しく食べていただくことができるので。

 

 ほっとする場所、ドキドキする場所

―日々の営業で感じることや、印象に残っていることなどはありますか
桝田さん)リピーターの方、ご近所のお年寄りの方がここでコーヒーを飲んでくれるとき、多分ホッとしに来てくれてるんだなって感じるんです。コロナでなかなか人と会えないとか、いろんな行事が中止になってるじゃないですか・・・。なので、ここに近所の人が集まって近況報告とか世間話とかしてるのを見るととても嬉しいんです。また、最近新町通りに新しくチョコレート屋さんができたり、ゲストハウスもできて人との繋がりをここでしてくれることが増えたんですよね。ここがあってよかったわ、ここでちょっとコーヒーが飲めてよかったわって言ってくださって、そういう人と人が繋がる場所として使ってもらえてるのが嬉しいです。

園田さん)先日、ご近所の方々が来られて「ここやったら感染対策ちゃんとしてるから安心やな」「近所の人と話するのってやっぱり楽しいな」「こうして1ケ月に1回集まれたら」「久しぶりにこんな感じで過ごせたわ」ってお話されてて。皆さん長引くコロナに飽きてしまってるんでしょうね。じっとしていることに我慢も限界なのかなって。ちょっとお出かけしたい、でも不安、あまり遠くにも行けない・・って感じですね。ここで集まって話ができたことにあんなに喜んでもらえるんなら、そういう場所としてこれからも使ってもらえたらなって思いました。

ー人との繋がりの大切さ、人と会える嬉しさを皆さん感じてるんですね。ご近所さんにとっても「ことほぎ」がほっとする場所として存在してる様子がわかります。園田さん)あと、観光客の方が、シフォンケーキやかき氷、柿ぷりんをお出しすると「わぁー!大きい!」とか「わぁー!かわいい!」って写真を撮って、インスタに投稿してくれたりするんです。そういった反応がとても嬉しいです。

森本さん)私は五條市で生まれ育ちましたが、今まで新町通りを通ることってなかったんですよね。それがここでお勤めさせてもらうようになって、あ、新町通りって久しぶり、あ、そういえば幼稚園の頃のお友達、この通りのこのおうちの・・・って色々思い出して、そういうのが個人的にはすごく懐かしいっていうのがありました。あと、趣味で日本中の重伝建を周ってらっしゃるご夫婦がお見えになって、「すごくいいですね」ってこの新町通りや五條市を褒めてくださるんです。私からすると、正直、すっかり錆びれてしまった・・・と思っていた場所を「いや、そこがいいんです。他の重伝建は観光地化されて、いろんなお店もあるんだけど、ここは静かに生活されてるそのままの様子がいいんです」って言ってくださって。自分の今までの間隔とは真逆の感じ方をされるそのご夫婦に、地元の者が関心なかったことに気づかせてくれた、あらためて地元を見つめるきっかけをいただけたことが印象に残っています。それから休みの日に、昔の通学路を歩いてみたり、路地に入ってみたりすると、”五條いいやん”って思いましたね。観光客の方がインスタにあげてる吉野川の写真を見ると、めちゃめちゃいいとこやんって思って笑

―新町通りはあらためて五條市を見つめる、魅力に気づかされるきっかけとなる場所ですね。
園田さん)2~3か月に1回東京から来てくださるお客様がいらっしゃるんですが、いつもカウンターに座られて、格子越しに外をながめゆったりとここでの時間を過ごしてくださいます。

桝田さん)ちょっと時間ができたら1ケ月に1回来られるときもあります。

―東京からそんな頻度で五條にこられる目的は?
皆さん)ここ、五條なんです。

園田さん)
五條に来たら、必ずここへ寄ってくださいます。五條の事は私達よりよくご存じです。金剛寺のボタンが・・・とか生連寺のてるてる坊主が・・・とか。奈良が大好き、中でも五條が大好きな方なんです。

桝田さん)奈良や五條へのルート、交通手段なんかもすごい熟知されてて、私達が色々教えてもらってるくらいですよ。

森本さん)きっかけは吉野川のこいのぼりだそうです。吉野川でこいのぼりがたくさん泳ぐ写真を見て五條に行きたいと思ったのが最初だそうです。こいのぼりをあげるところを見たかったそうで、あげる日の前日から五條市に泊まって準備されて。ここを拠点にいろいろおでかけもされますが、1~2日は五條でゆったり過ごし、河原や新町通りを歩いたり散策しながらここで休憩してくださるんです。

―こちらには展示スペースや飲食ブースがありますが、そこへ展示や出店される方との繋がりなどは?
桝田さん)いろんな方と知り合えますし、展示等も見れて楽しいですね。先日、初出店の店主さんが来られたんですが、坊主頭で髭を生やした結構体格のいい方で、もう私達最初ドキドキで、どうしようっっ(汗)、ちょっと絡みにくいかも~って思ったんですが笑、その方はその方で、帰り際に「いいんですか、僕たちなんかがここに来ていいんですか?」みたいな感じで笑。

お店は盛況でバタバタした日は私と森本さんもそちらのお店を手伝って笑 最後には色々お話して、売り上げはどうでしたか?て聞くと、「いや、違うんです、僕は人のつながりが楽しいんです。ここに来ていろんな人との繋がれることが楽しいんです」っておっしゃって。ここで出店される方にはそういうことを楽しまれる方もいてるんだなって思いました。私達も刺激、勉強になりましたね。いや、でも毎回最初はほんっとにドキドキで。お互い様子をみながら絡み始めるみたいな笑

園田さん)ここでの出店を終えた後もSNSでお互いフォローし合って、今日はここで出店してますとか近況を教えてくれるので、あ、今日はそこで頑張ってるんやなとか、ここで私達と出店者の方たちとの繋がりもできています。

桝田さん)お店に来られた方にあのスペースは何?って聞かれることもあるので、(チャレンジショップの)説明をすると、一度やってみよかなっておっしゃる方もいらっしゃいます。

歩いてみませんか 

―コロナ禍での引継ぎ、そして今もまだその中での営業かと思いますがそのあたりについてはどう感じてらっしゃいますか?
園田さん)「ゆるり」のとき、コロナ感染予防対策に対して正和会がすぐに反応、対応してくれたんです。検温、消毒をはじめ、ビニールカーテン、サーキュレーター、エアードッグ等の設置、徹底した感染対策のノウハウも教えてくださいました。その厳重な感染対策は、県の「感染防止等を行う飲食店等の認証制度の星三つ」をいただいています。ゆるりを引き継いだときからその感染対策の経験を大いに活かさせてもらっています。これからも正和会が築いてくださった感染対策の評価を維持しながら営業していきたいと思っています。

―何か困っていることはありますか
皆さん)駐車場・・・

園田さん)
お店の少し手前にあるんですが、「大野屋」と表示してるので「ことほぎ」という名前で来てくれる方にはわかりづらく、通り過ぎてから「駐車場どこですか?」って聞かれること、よくあるんです。この通りは一方通行でバックできないので1周まわってきてくださる方もいますが、諦める方もいらっしゃいます。大野屋は他の出店者様もおられて、それぞれの屋号がありますので仕方ないんですけどね。
桝田さん)新町通りにコインパーキングがあればなって思います。そしたら案内しやすいなって。皆さん観光地に出かけたときってお金払ってでも駐車場に車停めて観光しますよね。

―これからどういうお店にしていきたいですか?
桝田さん)皆さんに知ってもらって楽しんでもらえる空間にしたいですね。

園田さん)人と人との繋がりを増やしていけたら・・・その繋がりの場であれたらと思います。規模を大きくしてとかそういう野望は一切ないです笑。新町通りの活性化に少しでもお役にたてたらと思っています。ここはチャレンジショップの場所なので、いつまでも居座る訳にはいかないんですが、いつまでもいさせてもらえるようなお店になれたら嬉しいですね。

園田さん)五條市の方でも新町通りを通るのが初めてとか、滅多に通らないって方多くいらっしゃいます。24号線や京奈和もありここを通る用事がないっておっしゃるんですが・・・もしよければ、用事がなくても一度歩いてみてください。

桝田さん)ここは四季それぞれの風景を楽しめる場所でもあるのでウォーキングをされてる方、堤防沿いを散歩されてる方も、ちょっとこの新町通りをコースに入れてもらえてたら、何か楽しいんじゃないかなって思います。

―皆さん、本日はありがとうございました。

住所 奈良県五條市新町2丁目5-12(大野屋内)
電話 070-3313-9148
営業時間 10時~17時
駐車場 有 新町通り松本燃料店駐車場3台
定休日 毎週月曜日
※musubi・meguru各担当日についてはSNS、お電話等にて確認できます。

☆スタッフHのすぽっとwrite☆

新町通りを通る度、次のインタビューはここにしようと決めていながら、自称引っ込み思案?のため、外から様子をうかがうにとどまっていた私でしたが、インタビューが実現するまでに偶然にもお店へ行くきっかけをいただいたり、ご紹介いただける人との繋がりがありました。そう、私にとっても「ことほぎ」は繋がりの場でした。

インタビュー後は、もう慣れた様子でお茶しに行けるようになったのも、あの何ともいえない落ち着ける店内の雰囲気とスタッフの皆さんの温かさ・・・ことほぎがかもしだす雰囲気であることに他ありません。柿のスイーツも美味しかったですし、また新町通りを歩く機会が増えそうです。「いいやん、五條」♪

 

 

 

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