第83回ーPart3 登録有形文化財 藤岡家住宅     NPO法人うちのの館 館長 川村優理さん 

見せたいものがまだまだいっぱい

「古民家は未来へ進んでいく船」・・・だとか。ならば目指す目的地はどこ?船をテーマパークに?川村船長はどんな仕掛けを?。
長和が残した大切なもの、五條にこんな素晴らしい方がいたことを知れた「藤岡家住宅」インタビューの最終章。

全部あるやん、藤岡家。

―現在は資料に特化されているということですね。

そうですね。古民家って1軒の家なんですけど、実はメディア。情報の宝庫なんです。何百年も前からのメディアをどう生かして今に繋いでいくかという最中にいるんです。廃屋になってしまう古い建物や古民家をどうしていくかというのは日本中、世界中が困っていることだと思います。

―そうですね。こうして保存、公開されずに取り壊されれば、貴重な資料や文化も同時に失われるということですよね。

それで私が考えたことがあって、娘が大学で言語文化学をやっているんですが、テーマが一貫して「ディズニー」なんです。それで実際のミュージカルをみようと、一緒にアメリカで「ライオンキング」を見たんですが、その時、「なぜディズニーってこれだけ人を惹きつけるんやろ」って思ったんです。みんなすごく楽しそうでしょ?ディズニーランド、ディズニーシー、ディズニーワールド全て。私は娘とは違う「古民家というメディアをやらせてもらってる」視点で見るんです。

それで気づいたのがディズニーランドの「ホーンテッドマンション(世界各国のディズニーパークにあるライド型お化け屋敷のアトラクション)」。お化け屋敷なんですが、乗り込んだライドが真っ暗の中を進んで「この廊下・・・夏は暑くて、冬は寒くて恐ろしい・・・」ってアナウンスが流れたとき、「あ、藤岡家と一緒!」と思ったんです。作り物の蜘蛛の巣・・・「藤岡家に本物あるやん」、本を積み上げて作ったクリスマスツリーや、プーさんが覗き込んでる古い辞書や絵本・・・、「これ藤岡家にあるやん!これはいける!」って思ったんです。みんながこれだけ来たい場所にある要素を藤岡家は持ってる、「そうや!ここをディズニーにしよう!」と思ったんです。

―エンターテイメントってことですね。

そうですそうです。 


―実際、藤岡家でディズニー化しているところがあったりしますか?

100年前のピアノがあるんですが、この周辺を「美女と野獣」みたいにしたいと思って。バラのステンドグラスやハシゴがあったり・・・。展示してたら、動物の爪痕を見つけて、ほんとに美女と野獣みたいだと思いました(笑) 五條の子がもし修学旅行とかでディズニーに行って、「美女と野獣」を見たときに、「あ、これ藤岡家にあったやつ」って思うかもしれないでしょ(笑) だからディズニー化を目指そうかなと。

このピアノは長和の長女、瑠璃子さんのものなんです。英語やピアノを習って、お父様が転勤の時にはピアノとお手伝いさん付で一緒に引っ越されたほど、長和溺愛のお嬢様でしたが、小さな子供を残して24歳の若さで亡くなっています。その後ピアノはご親戚のもとで大切にされてましたが、ここを開館するときにお返しくださったんです。ピアノが帰ってきて瑠璃子さんも長和も喜んでると思います。

―ただ古いピアノだというだけでなく、それにまつわるお話やディズニー化があると、ご覧になる方の感じ方も様々ですね。

成長された瑠璃子さんのお子さんは、その後英語の先生になるために北宇智中学校に教育実習に来られます。そのときの担当がうちの母だったみたいで。まだ玉骨夫妻も居られた頃で、私に、といって、何か外国製の膨らますロバのお人形、多分ロディだと思うんですけど、それをくださったそうなんです。その方からは今も藤岡家に電話がかかってきてニューヨーク時代のお話などを聞かせてもらっています。

 

―やはり川村さんと藤岡家はご縁があったんですね。ピアノ以外にもいろんなものがありますが来館者はどのようなところに興味をもたれますか?

ここに来て何を見るかっていうのはその方の過去、現在、未来を反映していて、お人形が好きな方、絵が好きな方、建築をなさってる方、お庭に流れている川の石が全部お薬の石でできていると教えてくれた方は岩石を見る方、薬学をやる方、皆さん視点が違います。見る方によって得る情報が違うのは、古い建築物のもつメディア性のひとつだなと思います。

 

―私も初めての藤岡家でしたが、説明を聞くことでより興味が深まりました。当時の商売道具や贅をこらした屋敷等、藤岡家の繁栄ぶりや人物像などがわかり面白かったです。

江戸時代や戦前戦後、その当時の最先端のものがあるのでそれをみてもらいたいとも思いますし、この方は何がお好きなのかなって想像するのも楽しくて。子供さんの場合はここで絵を描いたり句を詠んでもらうと何が好きなのかがだいたい見えておもしろいです。五條中学の生徒さんがスケッチに来てくれたとき、絵の勉強ではなく、ここにあるもの何でもいいからひとつだけ好きなものを描いてもらったんです。温度計を描いた生徒さんもいれば、木組みを写した生徒さん、掛軸の絵を模写した生徒さんもいました。「自分」を見る機会になってもらえればと思います。

 

―かなりたくさんのものがあふれるように展示されてるので見どころ満載でした

私がここで感じたのは、私はまず母親なので、女の人は江戸が明治になっていようと、まず子供に何を食べさせようかと考えたのではないかということです。生活から覚えていく、生活や道具の変化などを追いかけるのが好きなんだと感じました。大和名所図絵や、木曽街道六十九次(歌川広重の作品)は、今だと普通、広重の絵=「美術」なんですけど、当時の旅の情報誌なんですよね。ここは橋が危ないとか、谷が深いとか、そういう生活者の視点で歴史を見るのが私は今、面白いのかもしれません。

―確かに、生活の視点で教わると「歴史苦手」意識が和らぎます。それにここはディズニーの要素を持ってるんですものね。また違った視点で見学できそうです。

そう言ってもらえると嬉しいです。修復する前に調査に来てた大学生さん達はここがただひたすら怖かったって言ってました。私も怖かったんです。怖いんで写真もパッと撮ってすぐ戸を閉めてみたいな・・・。そしたら写真がブレてる。でもそこには歴史のもつ重さと強さも感じることができました。田中さんが思い切って一歩踏み出してくれなかったら・・・と思うと、田中さんの踏み出された最初の一歩はすごく大きかったですね。

先日、自転車で小6の男の子が2人来てくれました。外で何か話し声が聞こえるんで表に出ると、近所の奥さんが「遠くから来たみたいなんやけど、見せたってくれる?」って。「いえ、僕、どうしても気になることがあって」って言うんです。もう「どうぞどうぞ」って。嬉しかったですね。それで見終わったとき「気になっていたことは解決しましたか?」って聞いたら「はい」って、帰って行きました。「子供さん達が何度も来てみたくなる。知りたいことがあるだけでなく、楽しんでもらえる。こういう場所でありたいなぁ」と思いました。

―それは嬉しいですね。「どうしても気になるもの」何だったんでしょうね・・・


ー現在、展示しているものや次に企画しているものをご紹介ください。

今は「天誅組の手紙」という展示で天誅組から藤岡家に届いた書状などを展示しています。3カ月毎に展示を変えていて、4月からは「明治天皇の誕生」を展示します。江戸時代から明治文化に近代化していく時代の日本の画像のかけらのようなものがいろいろありますので。明治天皇というのはまた偉大な天皇なんですよね。いきなり近代化していくわけですが、10代でものすごいことをしていくんです。中山忠光、天誅組との関連など、明治のものが結構ありますので4月からはそのタイトルで。

これからの展示で目指していくのは、今江戸時代の庭を掘りだしていってるんですけど。ますますディズニーフィケーションで、若い人たちが古いものにどれだけオシャレ、すごいって思ってくれるか・・・、私は皆さんにビックリしてほしいので。

 

―長い間、この藤岡家住宅で研究や調査をされてきた川村さんにとって「藤岡家住宅」「藤岡長和」とは?

基本ね、ミーハーなんで(笑) 藤岡家住宅は「発見できるドキドキの場所」です(笑) 直にその空間に居て、自分がふと開けて「えー!!」って驚くものがある。それを「見て見て!」って皆さんに見てもらう、そうすると、ご覧になった方から「これはこうで・・・」って教えてもらえる。ほんとドキドキ、発見の連続、ここは「発見」のテーマパークなんです。

 

―テーマパーク? やっぱりディズニーですね!

あー!そこにきましたね(笑)(笑)

長和については、あれほど華やかなエリート官僚であったのに、よくこれだけ静かに・・・辛いことを乗り越えた方だなと。私達の今の平和や繁栄の陰にはすごいしんどい思いをされた方がいて・・・、そんな思いをされた方が実際ここに居たってことにもろに出会った訳です。句集を見て勉強していくうちにその苦しさがどんどん分かっていったので、何ていうんでしょう、尊敬とかを超えて感謝するしかないというか。この土地や先人、ご縁に一生懸命感謝していく、そのひとつの象徴が長和だと思っています。私が女性であり母であることに特化するのであれば、静かに平和を祈るだけではなく何かを伝えていきたい、俳句でもいい、こういう人がここにいたということを伝える、そして心に感じ入ることのできる人をつくる、ある意味、教育機関でありたいと思っています。

 

―今後の課題はありますか?

 

目標がディズニー、テーマパークなもんですから(笑) テーマパークを楽しんで頂くためには厨子二階を探検できる場所にしたいです。厨子二階へのハシゴを登ってあそこを探検してほしい。そして見つけてほしいです。
金剛山の自然石を作った石組でできた庭も散策できるようにしたいです。

見せたいものがまだまだいっぱいあるの。だから課題、とういうか目標は「さらなるテーマパーク、さらなるディズニーフィケーション」。(笑)

 

 

―川村さん、本日はありがとうございました。

つづきはPart④文芸員、エッセイスト、ラジオパーソナリティと多方面でご活躍の川村優理さんについてのインタビューです。

 

■開館時間
9:00~16:00
貸会場の開館閉館時間はご要望に応じます。

■休館日
毎週月曜日
(月曜が祝日の場合は翌日)

■入館料(維持管理協力金)
大人300円
6歳~中学生200円
20人以上は20%の団体割引有

■アクセス
〒637-0016
奈良県五條市近内町526
TEL / FAX:0747-22-4013
☆JR和歌山線北宇智駅から徒歩約20分(1.3km)
☆京奈和自動車道 五條北インターから5分(側道を国道310号の方向に進み藤岡家住宅の看板で右折。金剛山の方向へ道なりに進む。)

NPO法人 うちのの館 登録有形文化財 藤岡家住宅のホームページはこちらから

 

 

 


☆スタッフHのすぽっとwrite☆

森鴎外、与謝野晶子、高浜虚子・・・教科書で見た人物。
天誅組、北宇智駅スイッチバック・・・、五條市の歴史。
取材してそれらと藤岡家との関わりを知ったとき
思いました。「えらいこっちゃ!」と。

玉骨の書斎で、机に向かって座ってみました。
窓から、梅の木や金剛山が見え、そこで一句・・・詠めるはずもないですが、
同じようにここに玉骨が座ってたんだと思うと「ゾクっ」。
私はこの「ゾクっと」フェチなんです。

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