第59回 (有)五條公益社 葬儀会館フューネラル和(なごみ)専務取締役 吉村和紗さん

何より大事なこと 仕事に「心」を。

 

「女性にできるのか」を「女性だからできる」へ

―五條公益社様の創業者、そして創業年を教えていただけますか。
昭和35年7月、祖父が創業しました。地域の皆様のおかげをもちまして今年で60周年になります。(2020年6月取材時点)

―吉村さんがこのお仕事に就かれたのはいつですか?またその経緯は?
大学を出てクレジットカード会社のコールセンターで働いてたんですが、父がこの葬儀会館を建てるということで、平成18年、この仕事に就きました。

―こちらの会館を建てることになった経緯は?
その頃、時代の流れで自宅で葬儀をする方が少なくなってきていました。葬儀会館を持ってないということが仕事に影響し始めましたので、仕事を続けていくうえで会館は必要だということで設立に至りました。

―会館名「フューネラル和(なごみ)」は吉村さんのお名前(和紗)と関連が?
はい。葬儀会館の名前ということでいろいろ悩みましたが、家族で話し合い、これからは私が継いでいく時代になるということで私の名前から一文字とって「和(なごみ)」と名付けました。

―和紗さんという素敵なお名前はどなたが付けられたんですか?
祖父です。祖父は人の名前を付けるのが好き?だったそうで、ご近所でも子供さんが生まれたら(頼まれたんでしょうか?笑)名前を考えて付けてたそうです。

―創業者のおじい様の思いを繋いでいってらっしゃるんですね。おじい様はどんな方でしたか?
私が小学校1年生の時に亡くなったので、少しの間しか一緒に居れなかったんですが、よくバイクに乗せていろんなところに連れて行ってくれて、ほんとに「優しい、大好きなおじいちゃん」その記憶しかないんです。
祖父は先見の明があったのか、五條市にいち早く「霊柩車」を取り入れたそうです。車の数もまだまだ少なかったその時代、都会にしかなかった霊柩車をこの先必ず「車社会」になるからといって。おじいちゃん、車の免許持ってなかったんですけどね(笑)

―おじい様やご両親の仕事を見てきて吉村さんの中でいずれこの仕事を継ぐんだというお気持ちはありましたか?
ありました。小さいときは葬儀で使ったおしぼりを洗濯して干すお手伝いをしたり、大きくなってからは、式でピアノの生演奏をしたり・・・そんな経験の中で、おひとりおひとり、それぞれが違う「最後のお別れ」の場面をみてきました。そのとき、この仕事すごいなと思ったんです。自分もこの仕事したいな、できたらいいなと思いました。

―では継ぐことに対する戸惑いや不安はなかったんでしょうか?
「死」というものに向きあい、故人の最後の時をお手伝いする仕事だということは小さい頃から分かっていましたので、そういう意味での戸惑いや不安は全くありませんでした。ですが、ハード面で女性につとまるのかという不安はありました。

―ハード面とは具体的にどういうことですか?
この仕事は、特に力仕事が必要な場面が多いんです。まだ会館がなかったその頃、自宅等へ祭壇セットを運んで組み立てたり、玄関飾りや、スピーカーを運んでマイクのセット・・・男性が行うそういう力仕事が私にできるかなと思いました。でも会館を建てたら祭壇はセットされていますし、力仕事も軽減され私でもできるんじゃないかと思いましたね。でもね・・・結局力仕事って他にもいっぱいあるんですよ。だからどんどん逞しくなってしまって笑

―フューネラル和(なごみ)さんのスタッフは全員女性だそうですが?
はい、代表の父以外は全て女性スタッフですね。やはり力仕事など父に助けてもらうことはたくさんありますが、遺族の女性の方が私に、居てくれてよかった、話しやすくて安心できた、色々聞けてよかったと言っていただくこともあって大変うれしく思っています。ちょっとしたことですが、細かなところに気が付いたり、女性の方が話しやすい内容等、そういう面では女性だからこそできることがあるんだと思っています。

「最後の時」 私達ができること

―継がれた当初はまずどんなお仕事を?また当時の思い出などは?
献茶さん(葬儀で多岐にわたり活躍する専門女性スタッフ)に付いて、お茶やおしぼりを一生懸命配りました。お焼香案内のタイミング、状況に応じた声掛け、細やかな気配り、所作・・・等々、厳しく(笑)教えてもらったことを覚えています。
昔から葬儀の手伝いはしてきましたが、知らないことだらけでしたので教えてもらってほんとによかったですね。また、マナー講習の先生もお呼びし、自宅ではなく会館で行う場合のまた違った流れや案内の仕方、そして改めて言葉遣いや話すときの目線、お茶の出し方等を一から習いました。

―お仕事はどのような流れで行われるのですか?
ご依頼をいただき病院やご自宅まで寝台車でお迎えにあがり、故人様をご安置する場所までお送りします。その後「枕飾り」をさせていただいた後、お寺さんをお呼びして「枕経」をあげてもらいます。葬儀プランや日程について打ち合わせをさせていただき、故人様を綺麗なお姿にして通夜の日に納棺します。ホールの準備も整え通夜、葬儀を行います。

―HPにありました「ありがとう納棺」とは?
通常はスタッフ1名で行われることが多いのですが、専任の納棺師二名体制で故人様のお世話をさせていただきます。大切なひとときに「ありがとう」の気持ちを込めて、ご希望の着物や洋服、仏衣と手甲、脚絆(死装束のひとつで手や足に付ける服飾品)を付ける作業をご遺族様にもご参加いただいて行うものです。

―「納棺師」。映画「おくりびと」※でその存在が知られましたよね。
そうです、その映画「おくりびと」が公開されてから、納棺師にお願いするようになりました。お客様がそれを望まれるようになって。納棺師は、体を拭き、顔剃り、髭剃り、シャンプー、爪切り、お化粧、衣装等で故人様を綺麗にそして美しく安らかなお姿にします。ご家族の方は大変喜ばれます。
※出典:フリー百科辞典「ウィキペディア(Wikipedia)」「おくりびと」は2008年の日本映画。滝田洋二郎が監督を務め第81回アカデミー賞外国語映画賞および第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した。

―悲しみの中での限られた時間でご家族の方は多くのことを決めないといけないんですね。
そうですね。祭壇やその他細部にわたることまで決めていただかないといけません。ご家族のご心情をお察ししできる限りのサポートをさせていただきます。
どんな仕事でも同じですが、何度も確認し確実に手配を行います。故人との最後の大切なときにお客様を怒らせてしまうミスなどありえませんので。

―和(なごみ)さん独自の葬儀でのとりはからいなどはありますか?
できるだけご家族と故人が最後に一体感をもっていただけるように献灯献花を行っています。はじめに喪主様にろうそくの灯を灯してもらいそれをお葬式が終わるまで灯し続け(献灯)、お子さんお孫さんをはじめ親族の方に棺の上に花束を手向けていただきお言葉をかけてもらってから式を始めます(献花)少しのことなんですがその瞬間を記憶に残るようにという思いで行っています。

―葬儀後はどんなことをされますか?
(仏教の場合)ご自宅に満中陰(四十九日)までお骨を安置する祭壇を飾らせていただきます。お葬式後当日に御墓に納骨される場合はそのお手伝いをさせてもらいます。その後四十九日まで七日事にご自宅へお供えのお花をお持ちします。ご家族の方がどうされてるか、困っていること、例えばいろんな手続で分からないことはないか等聞かせていただいています。

 

変わりゆく葬儀のかたち、変わらないおくる気持ち

―吉村さんは一級葬祭ディレクターの資格をお持ちですが、これはどういった資格ですか?
規定以上の葬儀実務経験年数があって、会場設営や式典運営等の「実技試験」と、宗教などの関連知識や行政手続きなど法的知識 に関する「学科試験」に合格した葬儀のプロに与えられる厚生労働省認定の資格です。幕張や司会進行など細やかで専門的な知識と実技が試されます。

―この資格を取ったことでご自身に変化などは?
そうですね、自信を持てたこと、そして、お客様に安心感を与えることができました。まだまだ男性社会のこの業界で、私が行くと「大丈夫?」という表情をされることもありました。でも、この資格証があることでお客様が安心して、あ、この子大丈夫なんやなって任せてもらえるようになりました。もちろんそこには14年間の経験や以前勤めていたコールセンターでの経験も含めてですが。それでもまだまだ初めての事ってありますけどね。

―「葬儀」に関して、昔と今、どんなことが変わってきたと感じますか?
「家族葬」が増えました。でも、都会に比べまだまだ五條市はご近所付き合いや繋がりのある地域ですので家族葬であってもご家族以外の方もお別れに参られる「小規模なお葬式」が増えたといった方がいいかもしれませんね。葬儀のかたちがかわってきたとはいえ、やはり故人を思う気持ちは変わらないですから。

そして相談に来られるお客さんの数が増えました。昔のように自宅や町内の会館で葬儀を行っていた時代はご近所の方が段取りから、食事の準備、帳場での金銭管理、片付け等をしていました。ですが今ではご家族の方がそれを行います。そのとき費用がどれくらいかかるのかなど、不安に感じるお客様、と同時にお金のことを聞きにくいという心情がおありの方もお見受けします。

―確かに、いざ家族が・・・一体何をどうしたらいいのか全くわからないです。
そうですよね。そういう方多いと思います。葬儀をさせてもらう側から言わせていただくと、不安や疑問は絶対、聞いてくださいということです。予算や意向、思いを伝えていただけたらと思います。
日頃、家族が元気であればまず葬儀のことなんて頭にないとは思いますが、「終活」という言葉があるように、元気な時だからこそ話しにくい話題を家族で話し合ってほしいと思いますし、そうすることで日々の生活で安心感を得られることにも繋がります。そういった意味でも普段なかなか足を運びにくい葬儀会館に気軽に来てもらえたらと私がずっとやりたかったイベントを企画してたんですが、コロナウイルス感染拡大防止の為、延期となり、今は状況を見ながら開催時期を検討中です。

―イベントとはどういったものですか?
今年は創業60周年の年でもありましたので、地域の皆様への感謝の気持ちと、そして「暗い」「寂しい」といったイメージを払拭し、明るく楽しいイベントにしたいと思っています。ヘッドマッサージや、パーソナルカラー診断、椅子ヨガ、人形供養、似顔絵、仏像なりきり体験、カイロプラクティック等々・・・。

―すごい盛りだくさんで、しかも美と癒し、クラフト、健康、占いと種類もたくさんでびっくりです!特に仏像なりきり体験?楽しそうですね!
はい笑笑 ぜひ!

―お仕事をする中で大切にされていることは?
どんな仕事でもそうですし、当たり前のことかもしれませんが、資格や経験はもちろん大事、でも「仕事に心がこもっているかどうか」ということ、それが何より重要で大切なことだと思っています。
そのうえで「黒子に徹すること」。私達は葬儀を進行させるという意味では、その場を取り仕切らねばなりませんが、あくまでもお客様のお手伝いをせていただいているということを絶対に忘れてはなりません。決して目立つことなく、でもしっかりと目配り気配りをするということですね。
そして地域、地元の人との繋がりです。道端で出会って挨拶して、ちょっと世間話。そんな中で質問や相談を受けることもあります。高齢のご両親が元気な時に相談なんて後ろめたい気持ちにもなりますが、そういった聞きにくいことを相談してもらえるような存在になれるよう、地域の方との繋がりを大切にしていきたいと思います。

夢と決意

―やりがいを感じるときは?
最後にありがとうと言ってもらったときですね。いつもがむしゃらにそして気を張って仕事して、気付けば、ああ、ちゃんとお見送りできてよかったっていう感じなんです。その瞬間に言ってもらえる「ありがとう」。もうそれがすべてですね。

―メンタル面がやられてしまうことなどありませんか?
やられることのないように切り替えてます。もちろん真剣に誠実に仕事をしますが心を入れすぎてしまうと壊れてしまうんです。かといって事務的になってはいけないですから。でも特殊なケースで引きずってしまった経験はあります。心も体もヘトヘトになりましたが、いつまでも引きずってたら仕事にならないのでなるべく忘れるようにしてます。仕事から離れ、ゆっくり心と体を休め、気分転換にカラオケに行ったりします。あとヨガとかライブ。心を無にしてリセットします。

ーお休みの日は何を?またご趣味は?
ダラダラしてます笑 YouTube、Hulu、撮りためた録画を見ながら笑。そして趣味はやはりカラオケ(笑)それと歌舞伎。

ー歌舞伎ですか?!なんか意外です笑!
猿之助の大ファンです。大学の時に母に海老蔵の歌舞伎に連れてってもらって以来興味を持って、いろんな人見るようになったんですけど、最終的に市川猿之助が超かっこいいってなって追っかけてます笑。もちろんファンクラブ入ってます。
あと、音楽ですかね、車では大好きなヒゲダン※聞いてます!
※Official髭男dismは、日本のピアノPOPバンド。愛称「ヒゲダン」出典:ウイキペディア

ー今後の展望、夢は?
もうひとつホールを建てたいです。今後、ますます一般葬から家族葬へと移行していくと思うので。そしてほんとはそうであってほしくはないですけど、この五條市も世代が変わり、近所付き合いが減ってしまうかもしれません。ひとり暮らしのお年寄りも増えてきます。うまく言えないですけど、いつの時代でも最後のときをお手伝いする気持ちは変わらずどんな場面でも柔軟に対応していくために時代に合ったホールを建てたいなと思います。具体的には家族葬を行うための家を建てたい、そこで家のように過ごしてもらって最後見送ってほしいと思ってるんです。
今までずっとお客様に安心してもらえる、故人とのお別れの大切な時間をゆっくりと過ごしてもらえるようにと思ってやってきました。それはこれからも変わりなく続けていきたいと思っています。

―吉村さん本日はありがとうございました。
はい、ありがとうございました。絶対イベントしますから!!(笑)
―はい。仏像なりきり体験行きますから!笑

 

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住    所   五條市五條3丁目383-1
フリーダイヤル  0120-00-2188(365日24時間対応)
 携帯・自動車電話・PHSからもご利用可能
F A X  0747-22-0231

☆スタッフHのすぽっとwrite☆

女性にできるのか・・・そんな不安を抱きながらも知識と経験を重ね、自信につなげてきた吉村さん。
男性に求められるような力仕事、女性に求められる細やかな部分、体力や精神力はもちろん、判断力、忍耐力・・・多くのことを身につけなければならなかったはず。

何より大事なこと・・・仕事に「心」を、黒子に徹する、そして地域とのつながりを。
吉村さんが真っすぐおっしゃったこの言葉。とても心に残りました。
優しさと強さをお持ちで、それでいてとてもノリがいい(笑)
同じ働く女性として、芯の強さや、仕事に向きあう姿勢に尊敬するばかりでした。伺う度に番犬リンに吠えられても笑、吉村さんに会うのが楽しみになる・・・そんな出会いを与えてくれた今回のインタビューでした。