「ひとつひとつていねいに作る」・・・その先にお客様の笑顔が待っているから。
「ひとつひとつていねいに作る」・・・その先にお客様の笑顔が待っているから。
ー 明治26年創業となっていますが、歴史あるお店の経緯を教えてください
わたしのおじいさんからです。私のお父さんは次男やったから、最初は長男さんが継ぐ予定で修行にも行ってたんですけど、戦争で亡くなったので急遽、僕の親父が継ぐようになって・・そのあと僕と言うことですね。
ー 下市にもお店がありますが
暖簾分けになるんです。わたしの父親の姉さんが、うちで修行してた人と結婚して、下市に店を出したんです。
下市のお店も長いですか?
70年くらいですね。
ー 私も気になっていたお店の名前の由来を教えて下さい
それはねえ・・僕も知らんのですよ。
おばあちゃんに一回聞いたことがあるんです。「なんでそんな名前なん?」って子供時分に聞いた覚えはあるんやけども・・・う~ん・・・欲・・欲やったんちゃうかなって・・萬、萬って(笑)
鶴がついてますが縁起が良いから?
鶴はねぇ、奈良に『 萬々堂通則 』ってあるんですよ。
で、そのお店の名前とのちがいってことで、前に鶴を付けて『 鶴萬々堂 』ってつけたんですよ。鶴は昔からめでたいことに出される、ってことで付けたって聞いてるんですよ。
でも 『 萬々堂 』って店の名前は良くあるみたいで。昔、子供時分かな・・学生時分に北陸の方に行ったときも『 萬々堂 』 ってお店があったような・・。駅のベンチに『 萬々堂 』って書いてありましたよ。今はもうないかもわかりませんが。
ー 和菓子の魅力についてですが
魅力・・・
季節季節によって、季節を感じる和菓子っていうのかな、そういうのを考えながらやっているんですけど・・。
和菓子って綺麗ですよね!
その季節季節に合う・・これを見たら、あっ季節がきたんやなぁって。
ちょっとずつ、1か月くらい早め早めで作るんです。梅やったら今はまだ咲いていないけど、2月初めから作ったりして。「あぁ、もうじき梅やなぁ」って感じとってもらうような・・。
もうそろそろ桜かな、とかゆうてるんですけど・・。去年は3月の10日くらいかな?やってるんですけど。「まだちよっと早いかなぁ」っていいながらやってるんですけど。
これが梅の和菓子ですね?
これ(枝)はごぼうですか?
そうです。ごぼうです。
枝に見立ててるんですよね?
はいはい。
このおまんじゅう(早わらび)も かわいいですが、この焼き印は?
焼き印はね、作ってもらうんです。色んな種類がありますね。
この(薄緑の)色は?
これは自分で塗るんです・・。
早いわらび・・早わらび(さわらび)やから、草があったほうがええかなって。
ネーミングはご主人が?
色々、本とか見て調べますね。
種類は増えましたか?
種類は増えてますねぇ。
形もちょっとずつ変わって来てますね。和菓子は型ってあるんですけどね、大きさも変わってきてると思います。昔のほうがちょっと大きいような気がします。
それは原材料の高騰とかでですか?
それもあるかもわかりませんね。
日本の行事のひなまつりや5月の節句には和菓子がつきものですが・・
昔に比べたらだいぶ減りましたけどね。子供がいてへんからっていうので、そんなんも段々なくなってきてますね。
ー そうなんですね。それではお店の看板商品を教えて下さい
酒まんじゅうですね。
昔の人は薄皮まんじゅう、ってゆうたりしてました。親父の時代は酒まんじゅうが人気でしたが、ここ何年か・・・20年か30年前からは鮎菓子のほうが人気があるみたいですね。
ー その私も大好きな鮎菓子について是非教えて下さい!
「桜鮎」と名前がついていますが
桜鮎ってね、吉野川の川沿いに桜の木いっぱいあって、桜がちらちら落ちるでしょ。その桜を川中で食べたかどうかわからないですが・・。この辺の鮎は全部桜鮎とゆうたように思うんです。
全国的には鮎菓子とよばれている?
いや、鮎焼きとかですね。
鮎菓子っていうところもありますが、岐阜の辺にも鮎のおまんじゅうが結構あるんですけど、鮎焼きやったかな? その所によっても結構違いますね。
形状は一緒?
だいたい一緒ですね。カステラの生地に甘いお餅の求肥(ぎゅうひ)ですね。
あのモチモチ感がたまりませんが(笑)
わかりますわかります (笑)
求肥って、餅粉とそれに砂糖が入ってるだけなんです。
お餅を甘くしただけとはちがうんですね?
餅に砂糖入れただけでは そないならんねんなあ・・あれなんやろなぁ・・? ぼくもずっと教えてもらった その方法で・・ 火加減もあるんやろうね。あれ火加減 けっこう難しいんですよ。砂糖全部 入れてしもたら 火緩めるとかね。そうせんと すぐこげつくんですよ。砂糖が入るだけで。
鮎菓子を作る工程で一番難しいのは?
生地のこね具合かな?こねすぎたら小麦粉やから粘り気が出るんですよ。それが出たらもう出来上がりが膨れませんね。水の量もあるし・・・難しいですね。
1日どれくらい作りますか?
その時にもよりますけど、100の時もあれば200の時もあるし・・ 週末やったらその倍はいきますね。
何年くらいで出来るようになりますか?
親父の時代から・・最初の頃は生地を残しといてもらって練習するんです。それでちょっとずつ出来るようになるんです。
すぐに出来ました?
いや!すぐは出来ません!
鉄板に、4つの5つ・・20個ずつ焼くんですよ。焼き終わったら、求肥入れて、クッて巻いていくんですけどね・・なかなかそれができませんわ。同じ小判形に焼くのもできませんね。
だからテレビで、ようそういう工場にいって、タレントさんとかやらしてもらてるでしょ? 絶対できしませんやんか? そんな簡単にでけへんのにって!(笑)
女優の尾野真千子さんも以前テレビでご紹介されてましたが
それは僕もちょっとびっくりしたんやけどね。(笑)
尾野さんのお母さんがよく来てくれとったんですわ。尾野さんは2、3回行き帰りは寄ってくれとたんです。紹介されたときはすごかったですね。尾野さん様様ですね(笑)。青森から九州から、いろんなところから2日くらい、ずっと電話なりっぱなしでしたね。
宅配の?
そうですね。 送ってくださいっていうて。
全然しらん人やけど、送ってみて・・多分お金貰われんかもわからんけど、とりあえず送っとこかゆうて・・。でもそれはなかったですね。お金はちゃんとくれましたけどね(笑)
今でも(宅配は)東京とか定期的にはありますし、大阪とからはしょっちゅう買いに来てくれる人もいてます。
ー 1日のスケジュールを教えてください
朝早い時は6時くらいからやりますし、注文によってですけど、普通は7時くらいからですね。一日中やってますね。
お一人で?
一人でやってます。
ー お店のPOPすごく魅力的ですね!!
これねえ・・
商工会の人が「もっと宣伝しなさい!」ってゆってね。五條の商工会の人がPOPの先生連れてくるからゆって、3回来てくれはったんです。桜の季節やったら桜の飾りつけとかを、全部、商工会の人が買いに走ってくれて、飾りつけてくれて。
あの立て看板も先生書いてくれはったんです。
商工会一丸となって・・ですね!
ぼく、もうええゆうたんですけど(笑)
「そんなんゆわんと私ら行って手伝いますから」っていわれて。
商工会の事務員さんが来られて、良くやってくださって・・。POPも言う事に答えててくれたらええだけやから、っていうさかい、先生が言うことにぼくが答えて、それを書いてくれはって。
ほんで「ちょっと立て看板もほしいんですけど」ってゆったら「ほな買いにいってきます」ゆうていってくれはって。
立て看板の外枠は、自分の知り合いに作ってもらったんですけど。
おもての立て看板は最近ですよね?
最近ですよ今年・・?去年ですよ。
うちは始めから宣伝しないってゆってたんですけど。「そんなえらそうな顔しとったら商売なりまへんで、これからは!」ってPOPの先生に怒られまして。うちは宣伝しまへんゆうたら、「そんなもんで今日日いけまっか」ってゆわれて(笑)
うち元々は商励会通りにあったんですよ。こっちにきて16年目かな。
それまで、商励会通りで長いことやってたんです。でもさびれてきて、車通りやないとあかんゆうことで・・。ちょうどここを紹介してくれる人がおって、ぜひ行きますって、ゆって行ったんです。
看板も新しくなって・・
あれけっこう目立ちます?
目立ちます!
これ・・・(笑)
大ヒットなんですよ!!(笑)
ほんまにあの時かたくなに宣伝しませんってゆってましたけど、商工会の人が一生懸命になってくれはってね・・・。
それもご主人の人柄の良さから・・ですね
ー 看板といえばお店に掲げられてる大きな看板にも目がいきますが
毎日新聞にも載せてもらったんですが、吉野川で昔は舟で鮎を捕ったような・・その舟の板かな? でも・・これは琵琶湖の舟の板って聞いてます。
創業当時の頃ですか?
いやそうではないですね。
(舟板に書いてる)電話が 2、3、4 ・・三桁やし・・ぼくが小学生時代時分の前の頃の話やし・・。
立派な賞状も飾られてますね
これはね博覧会に出した時のですね。大和羊羹が金賞を獲りましたね。
羊羹はずっとおじいさんの時代からですわ。
(その横の写真のを見て)
これがね五新鉄道の起工式の時の写真です。
五條市っていったら五新鉄道で、この写真絶対出るでしょ。このテントのマークがうちのマークやったんですわ。近所の人に「これお前とこのマークちゃうの?」って教えてもらって。多分うちが寄付したんやと思うんですわ、起工式に。それでうちで調べたら、羊羹に昔、引菓子ってあって羊羹の上に絵を書くんですよ。これ(プレート)を羊羹の上にあてて、すっと塗って、そしたら字が移るんです。引菓子の注文をもらったんやと思うんです。それで(プレートを)探したら出てきたんです。これは明治・・明治じゃないわ・・ 昭和14年ですね。
80年近く前ですね!
そうですね。
それで博物館に言いに行ったんです。これうちのマークですんで、どないか写真もらえませんか?って。
(博物館のかたも)「これ(マーク)何やろな?ってゆうとったんやけど、わかって良かった」ってゆってくれはって。
そしたら写真だけあげます、ゆうことでもらえたんです。それで飾らせてもらってるんです。
ー これからどんなお店に?
もうそない、ぎょうさん売れてもらわんでもきっちりと・・買ってくれはる方によろこんでもらえたら・・と、それでええと思ってやってるんですけどね・・。
ひとつひとつ丁寧に作ってる っていうだけですね。
その思いが伝わるからみんな買いにきてくれはるんですね
ちょっと手抜いたら、もう出来あがりませんからね。
・・これ、やまのいもで作るじょうようまんじゅう、っていうんですけどね。そのやまのいもを、とろろいも作るみたいにおろし金ですって、そこに砂糖入れて、あとお米の粉ですわ。それだけですけど。ちょっとまちごうたら、もうこないなりませんね。はでたり、カチンカチンになったり。いもの種類も、粘りの強いときもあれば弱いときもあるし・・ほんだらやっぱり(配合を)変えやんとね。鮎菓子でも、みかさまんじゅうでも。毎日、生地を合わせて焼くんですけど、毎日焼き上がりが違います。材料をきっちり計らんと、ええのできませんね。
繊細な和菓子だからこそひとつひとつ丁寧に・・・ですね
また大ヒットの看板も注目して、この通りを通ってみたいと思います!
本日はありがとうございました。
鶴萬々堂
住所 奈良県五條市五條1-3-13
電話 0747-22-2234
営業時間 9:00~18:00
定休日 水曜日
☆ スタッフ森子のつぶやき ☆
私も大好きで大好きで仕方ない、鶴萬の鮎菓子!
今回、インタビュアデビュー(笑)という記念すべき初回を是非、鶴萬さんで、と決めていた私・・。
アポをとるのに訪れた店先で、初対面するご主人にドキドキしながらも、奥から現れた優しそうな笑顔のご主人にホッとしつつ、取材当日を迎え、お話をお伺いすることができました!笑顔あふれるご主人の優しさが、鮎菓子のあのたまらないやわらかさに出ていたんだなぁと、改めて実感することができました。
帰り道、吉野川に掛かる大川橋を、大好きなスタッフH先輩と渡っていると、きらきらと輝く水面がとても綺麗でしばらく魅了され・・。五条と桜鮎!私と鶴萬の鮎菓子!!(笑)と切っても切れない縁が、この川に掛かる橋のように繋いでくれているんだなぁ・・・とそんなことを感じながら、・・そんな魅力あふれる五條の再発見ができた訪問となりました。
そしてそして、笑顔の素敵なご主人が作る鮎菓子!そんな鮎菓子に好き度が増してしまう森子でした!!