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第77回 池田精肉店 土谷輝生さん 土谷政恵さん

祖父の代から80年超
愛され続けるコロッケは毎日「手作り」

五條の名物・五條市民のごはんのお供、長年愛され続ける「池田のコロッケ」。
本陣交差点や大川橋、新町通りを目の前に、五條の歴史と共に歩んできた池田精肉店さんにインタビューしてきました。

歩みについて

―池田精肉店さんの歩みについて聞かせてください。
土谷政恵さん(つちやまさえさん 以下 政恵さん)祖父が大正時代に始めたのかな・・・最初は行商みたいな形態から始めたと思うんですよね。当時は電車もなくディーゼル?だったと思いますが、肉を仕入れてきて、リヤカーでここまで運んできて。その頃はお店はここじゃなかったみたいやけどね。
土谷輝生さん(つちやてるおさん 以下輝生さん)肉屋としてはね、ここの曾おじいちゃんがうちのおじいちゃんのと一緒に最初、商励会通りでやってたみたい。でも戦争で兄が亡くなってそれで弟(うちの祖父)が引き継いだのか、後に独立してお店を始めたみたいです。そのもっと大昔は牧場をやってたみたいで、牛を育てて、それを売ってた。昔はほら、耕運機のかわりに牛を使ってたやん。トラクター替わりね。その牛を育てて売ってたみたい。
政恵さん)牧場やりながらだんだん食用へと移っていったのかな。

政恵さんのお母さん 以下お母さん)おじいさんが肉屋始めたんは大正10年(1921年)やね。(82歳のおばあちゃんの記憶による)
輝生さん)じゃ、もう100年以上続いてるってことやね。一回、役所にも問い合わせたことあるんやけど、役所ができる前の事って調べるのが難しいらしくて。保健所も資料を持ち合わせてなくて、詳しいことは分からないんですよね。

―では輝生さん政恵さんは四代目?ということですね。
政恵さん)そうなりますね・・・、うーん、まぁ、でも実は今も店主は母で。高齢なので、これしてあれしてって感じで私達がやってるだけで、はっきりと今「誰が」とか「継いだ」とかっていう感覚はなくて、みんなで一緒にしてるって感じです。

―子供の頃、おうちがお店をしていることをどんな風に感じてらっしゃいましたか?
政恵さん)やっぱりね、よそのサラリーマン家庭のおうちに比べて、うちは従業員さんも居て毎日バタバタと忙しくしてて・・・。お友達が日曜日に家族とお出かけしたり、夏休みに旅行に行ったりしてるのをみて、うらやましいなと思ったことはありました。

―お手伝いなどもされてたんでしょうか?
政恵さん)高校生、大学生のときは手伝ったりしてましたね。

―卒業後はもうお店を手伝うかたちで?
政恵さん)
いえ、結婚して大阪に住んでました。普通にサラリーマンの嫁で。
で、主人がこっちでレンタルビデオ屋と漫画喫茶をやり始めて。その頃からお店を手伝い始め今に至ります。
輝生さん)当時肉屋の方には長年勤めてくれてた職人さんがいました。でもその方も高齢になり「これから池田(のお店)どないすんねん」と・・・。僕が引き継いでいかないと・・・と思っていたことではあったので、「はい。僕がさせてもらいます」と。それで、いろんなことを教えてもらったり覚えたりするのは当然片手間にできることではないのでビデオ屋や漫画喫茶の方はやめて、それからずっとここで家族と一緒にやっています

 

愛されるコロッケはすべて「てづくり」

―池田精肉店さんの一日はどんなことから始まりますか?
政恵さん)まずは、コロッケの芋を炊くところからですかね。芋を洗って皮をむいてそれを炊きます。それから次の工程、芋をつぶして・・・と進んでいきますが、それは私ではなくて、他の従業員さんが担当してくれてます。

―現在 何名でお店を切り盛りされてますか?
政恵さん)私達と息子、そして従業員さん・・・。シフトによって変わりますが、常に5名は必ずお店にいますね。

―1日どれくらいのお客様が来られますか?あと来店人数の多い曜日や、お客様の年齢層についてはいかがですか?
政恵さん)人数は分からないですが、土曜日は平日の倍近くのお客様が来られます。うちの定休日が日曜っていうのもあるかもしれないですね。今はスーパーでパック入りのお肉を買われる方多いと思いますが、土日の特別な日に買いに来てくださるのか、土曜日がお客様多いです。年齢層は揚げ物に関しては幅広い年齢のお客様に買っていただいてるのと、意外と男性客が多いですね。お肉の販売はご年配のお客様が多いという印象です。

―今や地域になくてはならない存在の池田精肉店さんですが、お店の特徴、強みは何ですか?
政恵さん)やはりそれはもう、祖父が作り上げたコロッケですね。肉屋さんがコロッケなどを販売するのは、仕入れたお肉に商品として使える部分とそうでない部分(提供可否)があって、その提供できない部分をコロッケとかミンチカツの材料として使えるからでもあるんです。ありがたいことに祖父が作ったコロッケは当店の名物みたいに皆さんに愛され、お買い求めいただき続けてるのはほんとに嬉しいですね。

―その大人気の「コロッケ」はいつ頃から始めたんですか?
輝生さん)おじいさんがこっち(現店舗)に来た時から始めたと思うけど、いつ頃この店に移ったんかな。
お母さん)昭和15年にこの店に移ったと思うよ。
輝生さん)あー、じゃあコロッケはもう80年以上前からや。
政恵さん)そんな前??その時代にフライヤーとかなかったでしょう?笑
輝生さん)そっか、違うか・・・うん?いや、お鍋とかで揚げてたんちゃう?辻さん(90代のお知り合い)が10代の後半にお店に来たときにはもうコロッケやってたって言ってたもん。それくらいの年代のおじいちゃんやおばあちゃんに聞かないとわからなくてね笑

―1日どれくらいの数を作られるんですか?
輝生さん)数というよりかね、ちょっとこっち来てみて。お芋さんを洗って皮をむく作業をこの機械がやってくれて、その後この釜でお芋さんを炊くんだけど、この釜に入る分の芋をつぶしてコロッケにしてるから何個っていうカウントしてないねん。この釜、一釜分、だいたいね、キロでいうと20キロくらいかな。

 

 

 

 

 

 

 

―20キロ・・・。ちょっとピンとこないです笑
輝生さん)そうだよね。で、結構知られてないのが毎日その日の分「手作り」してるってこと。逆に言えば、手作りじゃないと思ってる方が意外と多い・・・。

―え?
輝生さん)
冷凍のままちょうだいって言われたりするんで、ほら、スーパーとかで売ってるあんな状態で置いていると思ってる方もいるみたいで。

―いや、めちゃめちゃ手作りですよね。毎朝お芋を洗って皮をむいて茹でて・・・、それから・・・
輝生さん)つぶしてお肉と混ぜて味付けして、成型して冷まして衣つけて揚げて袋に入れて売る・・・80円。どう?笑

―すべて手作りでそのお値段!私達は嬉しい限りですが・・・
政恵さん)まぁね・・・。コロッケっていうのは市場的にはやっぱり庶民的?っていう感覚があるからそんなもんかなと思うですけどね。最近、芋も高いんですけどね笑 昔はスーパーでも一袋100円とかだったのに今そんな値段でないしょ?笑

―そうですよね!何もかも値上がりしてて。
輝生さん)油も3倍くらいになってるもん。
政恵さん)そうやねー。

―揚げる油も何か特定のものを使用されてるんですか?
輝生さん)うちはラードで揚げてる。

―家庭ではサラダ油が一般的かと思うのですが、ラードで揚げるとどう違うんですか?
輝生さん)揚がり方。サラダ油かヘッド(牛)かラード(豚)で同じものを揚げても仕上がりが全然違うやん?

―そ、そうなんですか?
輝生さん)サラダ油で揚げると時間経つとべちゃっとならへん?

―なりますなります。
輝生さん)ラードはなれへんねん。カラッとしてるねん。それを考えてラードにしたんだと思う。

―ラードで揚げるっていうのも祖父様の時代から?
政恵さん)そうです。それにサラダ油だと酸化するから捨てないといけないですけど、ラードとかヘッドはずっと継ぎ足しで使っていけるんです。

―重要な味付けは昔から受け継いだものなんですよね。
政恵さん)そうです。
輝生さん)極秘で。味付けはもうここ(政恵さんとお母さん)しか知らん笑。俺知らんもん笑
政恵さん)笑笑 まぁまぁまぁ・・・笑
輝生さん)一子相伝やで。
政恵さん)たまに味変わったなとか、ちっさなったなーとか言われることあるんですけど、「いや変わってないです!」って笑 昔から同じ型使って成型してますしね。お店によっては材料にマッシュポテト(つぶした状態のもの)を使うところがあるんですが、うちは先ほどからお話したように芋からなのでそこはやっぱり絶対にこだわって作ってると言いたいところですね。
輝生さん)芋は湯がくより、皮むきが大変。やったことある?笑

―ありますよー笑 いちおうこれでも主婦のハシクレなんで笑
輝生さん)めっちゃ大変やろ?皮むくの?

―はい。ま、ピーラーを使いますが笑
輝生さん)うちは機械でむくんやけどな、大変。

―お芋の種類は?
政恵さん)男爵です。
輝生さん)基本は北海道のお芋さん。春先から夏前の北海道の芋がなくなる2~3ケ月だけ別の新じゃがを使うけど、基本は北海道男爵。
政恵さん)重さもずっしりあって、甘味も味もしっかりしてて、ほくほくしてます。

―コロッケ作りで大切にしていることは何ですか?
輝生さん)毎日作ってるってこと。作り置きをせず毎日全部手作り。従業員さんたちは手がすいたら串カツ作ったり、ハムを切ったり。衣をつけたまま長時間置かないようにしてる。じゃないと衣が水分吸ってしまって揚げると真っ黒になるから。

―今日はコロッケ足りなくなった・・・って時は?
輝生さん)閉店・・・?笑
政恵さん)一日一釜(湯がく)って決めてるんで、もうそれ以上は作らないですね。ただお盆とか年末など帰省で皆が帰ってくる時期は2回炊いたりしますね。

 

池田精肉店広報担当

―2022年にLINE公式アカウントを開設されてますが、その経緯は?
政恵さん)どうやったかな?
輝生さん)電話かかってきて、今無料でこういうのできますけどどうですか?ってやり始めた。
奥さん)??・・・いやいやいやいや・・・ちゃうちゃうちゃう
輝生さん)そうだって。
政恵さん)違う・・・私、調べてん。自分で。無料でそういうサイト作られへんかなって。注文の予約をスムーズにできるサイト作れないかなって色々見てたら無料でできるサイトを見つけて。そこからLINEと連携できる事が分かって自分で全部やったもん。そんなん向こうからしませんかって電話かかってきてないで。
輝生さん)え!? ほんまに?

―まぁまぁまぁまぁ笑・・・ではもしかしてインスタグラムの投稿も・・・?
政恵さん)全部、私笑 誰もやってくれないもん笑

―投稿ネタの感じから、てっきり息子さんか誰かがされてると・・・笑
政恵さん)それよく言われます。だいぶしんどいんですよ、ネタ考えるのが笑 だからネタが尽きたら投稿ストップ笑
輝生さん)息子は息子で忙しいんでねー。
政恵さん)私も忙しいねん。だから家帰ってからやってるねん。

―まぁまぁまぁ笑  実際LINEでの注文はどうですか?お友達登録が1000名突破されてますよね。
政恵さん)はい、ありがとうございます。お客様も、LINEで注文するのが楽と言ってくださいます。こちらとしても電話での聞き間違いの解消や、時間の短縮もできてよかったです。

―インスタ投稿主が政恵さんだと判明したところでもう一点気になってたんですが・・・。以前、店舗前にマスク姿のかわいいぬいぐるみを見ましたが。あれは?
政恵さん)私。笑 コロナ禍にただアルコール消毒をボンと置くだけだと何か冷たい感じがするから、何かこう・・・、なめこちゃん(ぬいぐるみのキャラクター)
にマスクさせて、「ま、アルコール消毒やってちょうだいよ♪」みたいなね笑 うちの娘が持ってたぬいぐるみがあったんで。その頃はマスクさせてたから何か可愛かってんけど、マスク外してそのまま置くと何?って感じやから、その後、冬はニット帽被せてみたり?WBCのときはユニフォーム着せてみたり?しててんけどね。

―不二家のペコちゃんみたいな感じで?笑
政恵さん)違う違う

―今日は居なかったですけど?
政恵さん)ネタ切れ。笑

―そういう演出も全部政恵さんがされてたとは。ただただ驚きです笑
政恵さん)そうですよー全部私ー!笑

俺は「池田」で

―定休日は日曜日のみですね。池田精肉店さんにとっての貴重な休日は何されてますか?
政恵さん)ほんまにバッタバタです。週1回の休みやからちょっとゆっくりしてから・・じゃない。動かんと損!?て感じで買い物行って、喫茶店行ったり、それでまた何かして・・・。それはもう息子も同じで毎週日曜日、空いてる時ないですもん。山行ったり、海行ったり。旦那もテニス行ったり、みんなそれぞれです。

―息子さんが継いでくださるのは頼もしいですね。
政恵さん)はい、もうそれはありがたいことに。小学校のときから言うてましたよ。「俺はもう”池田で”」って笑

―何か今後とりいれてみたいこと、やってみたいことはありますか?
政恵さん)働き手もだんだん少なくなってきてるから、仮に大きくしようと思っても、無理がありますよね。今、海外の方を雇用されてるところ増えてきてるじゃないですか。そういう風にできるんであれば考えていけるかもしれないですけど、いまのところ家族経営プラス来てもらってる従業員さんのキャパでやっていける範囲でなので、まだちょっとわからないですね。

―お店は新町通りや大川橋も近く、付近でのいろんな行事や時代の移り変わりを目にしてきたかと思いますが、五條市についてどのように感じますか?
政恵さん)子供の頃は、新町通りもただの古い街並みっていうだけで特に何も思いませんでしたが、今は道も綺麗に整備されて、古民家を再生したお店とかも増えてきましたよね。観光客も少しずつ増え、そういった感じでこれからもお店や観光客が増えていけばいいなと思います。駐車場の整備などは取り組んでほしいですね。でも若い世代がいなくなってしまって、何かこう、若い世代が働いていける企業や工場の誘致とか、大学とかができれば違うんでしょうけど、五條にいてても・・・て、みんな出ていっちゃうじゃないですか実際。
中央公園には市外からも子供連れが大勢遊びに来るようで、帰りにお店に寄って買って帰ってくれます。そういう公園があるのはいいなと思いますね。やっぱり人が集まるようなものがないとってことですよね。

―輝生さん、政恵さん、お母さん、本日はありがとうございました。

住  所 五條市五條1丁目9-23
電話番号 0747-22-2437
営業時間 9:30~18:45
定 休 日 日曜日・臨時休業

 


☆スタッフHのすぽっとwrite☆

家でコロッケを作ったことありません。
冷凍を揚げても大失敗。なのでワタクシ、主婦のハシクレは今後も家でコロッケを作る気も揚げる気もありません笑。だってあんなに美味しい「てづくりコロッケ・ハムカツ・串カツ・・・」が池田さんにあるんですから。

お忙しい中、つたない取材に快くお応えいただき楽しいひとときでした。なのでワタクシ、インタビュアーのハシクレは、この記事を通してお店やコロッケのこと、そしてSNSやなめこちゃんディスプレイはぜーーんぶ、政恵さん発信なんだということを少しでも多くの皆様に知ってもらえたら嬉しいです笑。

店先の“幸せコロッケ香”に包まれ出迎えてくれたあのなめこちゃんにまた会えるのを楽しみにしています♪

 

すぽっとらい燈とは?