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第69回 Cafeことほぎ 桝田小百合さん 園田ひとみさん 森本早苗さん

ここが「繋がり」の場所であれる幸せ お客様も私達も

重伝建五條新町通りの起業家支援施設「大野屋」で前身の「町家カフェゆるり」を引き継ぎ再スタートした「caféことほぎ」。古民家を改装したお店は重厚で風格ある外観、梁や柱、また格子戸越しに入る光、見える眺め等、日本の伝統的な美しさがあふれている。そんなカフェを日替わりで?営業する3名の女性スタッフにインタビューさせていただきました。

 

来てみたらここでした

―「町家カフェ ゆるり」を引き継がれた経緯について聞かせてください
園田ひとみさん 以下 園田さん)「ゆるり」は社会福祉法人正和会が営業していました。5年間営業させてもらったんですが、正和会の本業の方が忙しくなってきたということもあり一旦5年という区切りで撤退しましょうということになりました。私達は正和会の「カフェ担当」で「ゆるり」の時からのスタッフだったんですが、撤退すると聞いてとても残念に思いました。顔馴染みのお客様もいてくださいましたし、ここがまた空き家(空きスペース)になってしまうな・・・って。そこで3人で話合って、正和会から離れて自分達だけでやってみようかということになり、正和会に相談し承諾いただきました。それで店名を「ことほぎ」と変えさせてもらって再スタートしました。

―では皆さんはもともと正和会の職員さんだったんですか?
桝田小百合さん 以下 桝田さん)いえ、私はハローワークで「カフェのスタッフ募集」という求人を見て応募したんです。そこで正和会というお名前を見たものの、正和会さん自身がカフェを始めるとか、場所がここだとも思ってなくて、多分、正和会の施設内にカフェがあって、そこで働くのかなって思ってて。それで来てみたらここで働くんだって分かって笑。

園田さん)
私もそんな感じだったような・・・笑。

ーでは、皆さんは「ゆるり」のスタッフ募集がきっかけでお知り合いになったんですね。以前からカフェのお仕事に興味があったんですか?
桝田さん)そうですね、みんな接客業の経験があるので。

―ゆるりのスタッフとして働き始めて、当時どんなことを感じましたか?
園田さん)あ、こういう形(起業家支援施設内での営業)の経営なんだと分かりました。今までの経験のあるカフェとは違って、色々制約がある(カフェスペースで提供できるメニューの制限、営業日が決まっている等)ことがわかりました。その中でも自分の今までの経験を生かしてお仕事させてもらおうと思いました。

―前身の「ゆるり」と現在の「ことほぎ」、何か違いはありますか?
皆さん)そんなに大きな違いはないですね。

園田さん)
自由にできる部分があることですね。今までは五條市の規約の中のさらに正和会の規約の中での営業でしたが、今は例えば、自分が今日はこのメニューにしようと思えばそれができるとか。それ以外は特に違いはなくて、だからこそといいますか「ゆるり」時代のお客様が引き続き来てくださるのでそれがとても有難いですね。「ゆるり」を始めた頃は観光客を含めそんなにお客様も来てくれなかったんですが、5年間でこのお店のことを知っていただけて徐々にお客様が増えてきました。「ゆるり」の5年間があったからです。名前は変わりましたが、以前と変わらずお馴染みのスタッフが引き続きお待ちしていますので・・・とお客様には伝えています。 

―「ことほぎ」という店名の由来は?
園田さん)3人で候補を出し合い、ずらっと並べた名前をいくつかに絞りました。その中で「ことほぎ」という言葉は「寿ぐ(ことほぐ)」というおめでたい言葉だし、響きも良いなと。おめでたい言葉で少しでも新町通りの活性化につながればってことで「ことほぎ」に決めました。

 

2つの顔

―ことほぎは「日によって店主が替わり、「meguruめぐる」と「musubiむすび」2つの顔をもつcafé」だとうかがいました。そのあたりについて聞かせてください。
桝田さん)「ことほぎ」として再スタートするにあたって、それぞれの両立していく仕事や家庭の事情を考えるとここの規約通りに(定休日(月曜日)以外は必ず開店)お店の営業を続ける自信がなかったんですよね。私は家が農園なのでその仕事と、このカフェの仕事、そして介護などもありますし・・・

森本早苗さん 以下森本さん)
私はお二人のサポートという形で働かせてもらっています。

桝田さん)
それぞれの事情を踏まえると、二人で交替制にすれば無理なく営業を続けられるんじゃないかってことで。でもどうしても無理な時は森本さんがサポートしてくれるので、3人で協力してこのスタイルでやっています。それと、それぞれがちょっと違ったメニューを出したいとか、多分そこも分かれてくると思ったので、お互いを高め合うため、また経営上や食材の管理等、別々にした方がやりやすいんじゃないかってことでこのスタイルにしました。

森本さん)お二人が急用でお店に出られないときのサポートというかたちでお手伝いさせてもらってるんですが、私はケーキ等を作る方の経験はないので、下準備しておいてくれたケーキにトッピングをしたり、飲み物を作ってお出ししたりしています。今日は桝田さん、園田さんいるかなと思ってお越しいただいた方には申し訳ないんですけどね。

―3人でフォローしあって営業されてるんですね。
桝田さん)そうですね。個人経営ではなく市の規約のもとの営業ということで、ここで一緒に働きそのあたりを理解、共有している私達で一緒にお店をやっていきませんかってとこからスタートしたので、互いにフォローしあえてるかなと思います。

―「musubiむすび」「meguruめぐる」のそれぞれの特徴や思いを聞かせてください。
桝田さん(musubiむすび)家業が柿・梅農家なのでそれを使ったものでいきたいなと思っています。ただ、柿、梅の時期は家業も当然収穫で一番忙しい時期なのでそこがネックでして・・・。
五條市の方って柿は生で食べるのがいちばんって思ってる方、多いと思うんです。五條市でも柿をメインにしたケーキや、スイーツを出されてるとこってあまりないんです。お店に来てくださる方には「ここら辺に柿売ってるとこないの?」って結構聞かれるんです。例えば駅からここまでの道中にはその案内をできるところがないので選果場を案内するんですが、そしたら選果場へ行った帰りにここへ寄って柿をつかったスイーツを食べてくれるんですよね。「柿を使ったものを食べれるお店がないのよ」って言われて、あ、それやったらここでそれをお出しして、その美味しさを分かってもらえるのがいちばんいいなぁって思って。五條市の人をはじめ多くの人に柿ってこうやって食べたら美味しいんだよってことを知ってもらいたいですし、五條市の活性化には柿をもっと宣伝したらいいんじゃないかと思っています。柿は割とご年配の方が好まれるので、若者にももっと知ってほしいなって思いますね。

―例えばどんな食べ方があるんですか?
桝田さん)生で食べるにしても、ヨーグルトに入れたりされる方はいらっしゃるかもしれないですけど、例えば、柿はクリームチーズとすごく相性がいいですし、あと、ここでは柿プリンや柿スムージーもお出ししています。生で食べるにしてもパフェにしてお出しするなど、五條の方にも知ってほしい美味しい食べ方を発信していきたいと思っています。

園田さん(meguruめぐる)私は柿や梅を桝田さんのところから分けてもらって、それをアレンジしたものをお出ししていますが、どうしてもよく似たものになってしまいます。ですので私は五條市で獲れる美味しいイチゴや桃、マスカットや梨といった果物を使ってちょっと違うものもやってみようと思っています。あと、栗なども取り入れたものも考案中です。桝田さんの「musubiむすび」とは違う特色をあえて出していきたいな・・・と思っています。

ー最近、モンブランなども話題になってますよね。ぜひ、栗を使ったスイーツも考案してほしいです。
桝田さん)柿農家の私は、廃棄されるような柿がいちばん美味しいと思っています。少し傷があるものはそこから甘味が増しますし、既に赤く色づき今から市場に出せない柿はその時が一番甘味みのピークだったりします。五條市の人は柿を袋や箱にいっぱいもらえたりってことも普通にあるので、それで十分って思ってしまうのかもしれません。広報で柿のスイーツを紹介させてもらってますが、どれだけの方に興味を持ってもらえてるんかなって思います。難しいですね。柿を五條市に発信したいのか、五條市以外の方に発信したいのか・・・、そこが揺れるところです。

園田さん)柿が大好きで毎年、柿の季節になると大阪からお越しになるリピーターさんもいらっしゃいますし、若い方でも柿が好きって言ってくださる方もいますけどね。やはり市外、県外から来ていただく方が多いです。

―定番のシフォンケーキの他に夏はかき氷も人気だったそうですね。
園田さん)奈良市の方でかき氷がブームになってきてましたし、年々夏の暑さが増してきたのもあってかき氷を始めました。シロップにこだわって特色を出していこうということで、柿、梅のほかに苺や桃のシロップを手作りし、徐々に種類を増やしていきました。すもものシロップもできて好評いただきました。

―柿や梅、すもものシロップのかき氷なんて、食べたことないです。よくある夏祭りとかのかき氷とは違うんですね。
桝田さん)そうですね。できたら五條産、できなくても奈良県産でいきたいというのがこだわりです。とっても美味しいのに廃棄されてしまう果実も、シロップ等、違ったかたちに加工することでまた美味しく食べていただくことができるので。

 

 ほっとする場所、ドキドキする場所

―日々の営業で感じることや、印象に残っていることなどはありますか
桝田さん)リピーターの方、ご近所のお年寄りの方がここでコーヒーを飲んでくれるとき、多分ホッとしに来てくれてるんだなって感じるんです。コロナでなかなか人と会えないとか、いろんな行事が中止になってるじゃないですか・・・。なので、ここに近所の人が集まって近況報告とか世間話とかしてるのを見るととても嬉しいんです。また、最近新町通りに新しくチョコレート屋さんができたり、ゲストハウスもできて人との繋がりをここでしてくれることが増えたんですよね。ここがあってよかったわ、ここでちょっとコーヒーが飲めてよかったわって言ってくださって、そういう人と人が繋がる場所として使ってもらえてるのが嬉しいです。

園田さん)先日、ご近所の方々が来られて「ここやったら感染対策ちゃんとしてるから安心やな」「近所の人と話するのってやっぱり楽しいな」「こうして1ケ月に1回集まれたら」「久しぶりにこんな感じで過ごせたわ」ってお話されてて。皆さん長引くコロナに飽きてしまってるんでしょうね。じっとしていることに我慢も限界なのかなって。ちょっとお出かけしたい、でも不安、あまり遠くにも行けない・・って感じですね。ここで集まって話ができたことにあんなに喜んでもらえるんなら、そういう場所としてこれからも使ってもらえたらなって思いました。

ー人との繋がりの大切さ、人と会える嬉しさを皆さん感じてるんですね。ご近所さんにとっても「ことほぎ」がほっとする場所として存在してる様子がわかります。園田さん)あと、観光客の方が、シフォンケーキやかき氷、柿ぷりんをお出しすると「わぁー!大きい!」とか「わぁー!かわいい!」って写真を撮って、インスタに投稿してくれたりするんです。そういった反応がとても嬉しいです。

森本さん)私は五條市で生まれ育ちましたが、今まで新町通りを通ることってなかったんですよね。それがここでお勤めさせてもらうようになって、あ、新町通りって久しぶり、あ、そういえば幼稚園の頃のお友達、この通りのこのおうちの・・・って色々思い出して、そういうのが個人的にはすごく懐かしいっていうのがありました。あと、趣味で日本中の重伝建を周ってらっしゃるご夫婦がお見えになって、「すごくいいですね」ってこの新町通りや五條市を褒めてくださるんです。私からすると、正直、すっかり錆びれてしまった・・・と思っていた場所を「いや、そこがいいんです。他の重伝建は観光地化されて、いろんなお店もあるんだけど、ここは静かに生活されてるそのままの様子がいいんです」って言ってくださって。自分の今までの間隔とは真逆の感じ方をされるそのご夫婦に、地元の者が関心なかったことに気づかせてくれた、あらためて地元を見つめるきっかけをいただけたことが印象に残っています。それから休みの日に、昔の通学路を歩いてみたり、路地に入ってみたりすると、”五條いいやん”って思いましたね。観光客の方がインスタにあげてる吉野川の写真を見ると、めちゃめちゃいいとこやんって思って笑

―新町通りはあらためて五條市を見つめる、魅力に気づかされるきっかけとなる場所ですね。
園田さん)2~3か月に1回東京から来てくださるお客様がいらっしゃるんですが、いつもカウンターに座られて、格子越しに外をながめゆったりとここでの時間を過ごしてくださいます。

桝田さん)ちょっと時間ができたら1ケ月に1回来られるときもあります。

―東京からそんな頻度で五條にこられる目的は?
皆さん)ここ、五條なんです。

園田さん)
五條に来たら、必ずここへ寄ってくださいます。五條の事は私達よりよくご存じです。金剛寺のボタンが・・・とか生連寺のてるてる坊主が・・・とか。奈良が大好き、中でも五條が大好きな方なんです。

桝田さん)奈良や五條へのルート、交通手段なんかもすごい熟知されてて、私達が色々教えてもらってるくらいですよ。

森本さん)きっかけは吉野川のこいのぼりだそうです。吉野川でこいのぼりがたくさん泳ぐ写真を見て五條に行きたいと思ったのが最初だそうです。こいのぼりをあげるところを見たかったそうで、あげる日の前日から五條市に泊まって準備されて。ここを拠点にいろいろおでかけもされますが、1~2日は五條でゆったり過ごし、河原や新町通りを歩いたり散策しながらここで休憩してくださるんです。

―こちらには展示スペースや飲食ブースがありますが、そこへ展示や出店される方との繋がりなどは?
桝田さん)いろんな方と知り合えますし、展示等も見れて楽しいですね。先日、初出店の店主さんが来られたんですが、坊主頭で髭を生やした結構体格のいい方で、もう私達最初ドキドキで、どうしようっっ(汗)、ちょっと絡みにくいかも~って思ったんですが笑、その方はその方で、帰り際に「いいんですか、僕たちなんかがここに来ていいんですか?」みたいな感じで笑。

お店は盛況でバタバタした日は私と森本さんもそちらのお店を手伝って笑 最後には色々お話して、売り上げはどうでしたか?て聞くと、「いや、違うんです、僕は人のつながりが楽しいんです。ここに来ていろんな人との繋がれることが楽しいんです」っておっしゃって。ここで出店される方にはそういうことを楽しまれる方もいてるんだなって思いました。私達も刺激、勉強になりましたね。いや、でも毎回最初はほんっとにドキドキで。お互い様子をみながら絡み始めるみたいな笑

園田さん)ここでの出店を終えた後もSNSでお互いフォローし合って、今日はここで出店してますとか近況を教えてくれるので、あ、今日はそこで頑張ってるんやなとか、ここで私達と出店者の方たちとの繋がりもできています。

桝田さん)お店に来られた方にあのスペースは何?って聞かれることもあるので、(チャレンジショップの)説明をすると、一度やってみよかなっておっしゃる方もいらっしゃいます。

歩いてみませんか 

―コロナ禍での引継ぎ、そして今もまだその中での営業かと思いますがそのあたりについてはどう感じてらっしゃいますか?
園田さん)「ゆるり」のとき、コロナ感染予防対策に対して正和会がすぐに反応、対応してくれたんです。検温、消毒をはじめ、ビニールカーテン、サーキュレーター、エアードッグ等の設置、徹底した感染対策のノウハウも教えてくださいました。その厳重な感染対策は、県の「感染防止等を行う飲食店等の認証制度の星三つ」をいただいています。ゆるりを引き継いだときからその感染対策の経験を大いに活かさせてもらっています。これからも正和会が築いてくださった感染対策の評価を維持しながら営業していきたいと思っています。

―何か困っていることはありますか
皆さん)駐車場・・・

園田さん)
お店の少し手前にあるんですが、「大野屋」と表示してるので「ことほぎ」という名前で来てくれる方にはわかりづらく、通り過ぎてから「駐車場どこですか?」って聞かれること、よくあるんです。この通りは一方通行でバックできないので1周まわってきてくださる方もいますが、諦める方もいらっしゃいます。大野屋は他の出店者様もおられて、それぞれの屋号がありますので仕方ないんですけどね。
桝田さん)新町通りにコインパーキングがあればなって思います。そしたら案内しやすいなって。皆さん観光地に出かけたときってお金払ってでも駐車場に車停めて観光しますよね。

―これからどういうお店にしていきたいですか?
桝田さん)皆さんに知ってもらって楽しんでもらえる空間にしたいですね。

園田さん)人と人との繋がりを増やしていけたら・・・その繋がりの場であれたらと思います。規模を大きくしてとかそういう野望は一切ないです笑。新町通りの活性化に少しでもお役にたてたらと思っています。ここはチャレンジショップの場所なので、いつまでも居座る訳にはいかないんですが、いつまでもいさせてもらえるようなお店になれたら嬉しいですね。

園田さん)五條市の方でも新町通りを通るのが初めてとか、滅多に通らないって方多くいらっしゃいます。24号線や京奈和もありここを通る用事がないっておっしゃるんですが・・・もしよければ、用事がなくても一度歩いてみてください。

桝田さん)ここは四季それぞれの風景を楽しめる場所でもあるのでウォーキングをされてる方、堤防沿いを散歩されてる方も、ちょっとこの新町通りをコースに入れてもらえてたら、何か楽しいんじゃないかなって思います。

―皆さん、本日はありがとうございました。

住所 奈良県五條市新町2丁目5-12(大野屋内)
電話 070-3313-9148
営業時間 10時~17時
駐車場 有 新町通り松本燃料店駐車場3台
定休日 毎週月曜日
※musubi・meguru各担当日についてはSNS、お電話等にて確認できます。

☆スタッフHのすぽっとwrite☆

新町通りを通る度、次のインタビューはここにしようと決めていながら、自称引っ込み思案?のため、外から様子をうかがうにとどまっていた私でしたが、インタビューが実現するまでに偶然にもお店へ行くきっかけをいただいたり、ご紹介いただける人との繋がりがありました。そう、私にとっても「ことほぎ」は繋がりの場でした。

インタビュー後は、もう慣れた様子でお茶しに行けるようになったのも、あの何ともいえない落ち着ける店内の雰囲気とスタッフの皆さんの温かさ・・・ことほぎがかもしだす雰囲気であることに他ありません。柿のスイーツも美味しかったですし、また新町通りを歩く機会が増えそうです。「いいやん、五條」♪

 

 

 

第68回 田園公民館 館長 蔵永明美さん

好きで選んで来た街だから

人々が集い、学び、繋がる場所、公民館。そこで得られるものは知識、情報、仲間・・・ほかにもたくさんあります。「この街が好きだから」「お世話するのが好きだから」純粋にそれだけだと語る館長の蔵永明美さんに館長になられた経緯から現在の活動などを聞かせていただきました。

なくしたもの、増やしたもの

―蔵永さんが田園公民館館長になった経緯について聞かせてください
今から8年前に市役所の方からお声をかけていただいたのがきっかけです。で、何で私なのかって話になるんですけど、元々、私は街づくりとか地域のイベントみたいなことにとても興味があって、今まで色々なイベントの企画書や申請書の提出、打ち合わせ等で市役所へ行くことが多かったんです。である時、ここ(田園公民館)が館長不在の状態で誰かしてくれる人を探しているというお話から、「蔵永さん、館長してくれませんか」と声をかけていただいたんです。市役所の方達とは何年ものお付き合いでしたし、私が田園に住んでいることやこんな性格だというのも大体ご存知だったとは思うんですが笑、そのうえで声をかけてくださいました。

―館長のオファー、どうお答えに?
「いいですよ。わかりました。」ってお返事しました。

―その場で了承されたんですか?! 不安とか迷いとかは?
なかったですね。私からしたら嬉しかったんですよね。公民館っていろんな人が集まっていろんなことを知ったり学んだりするところでしょう?地域のことを多くの方に知ってもらうにはこういう場所って大切だと思ってましたし、私が今までやってきたこと(地域のイベントを企画していろんなことを知ってもらう)と、公民館活動(サークルを作って人々が集まって学んだり交流する)は、よく似てるし、私がしていることの延長線みたいだなと。新たな仕事が増えるという感覚はなく、私自身も色々教えてもらえる機会が増えるのでは?って感じで。だから、その場で承諾のお返事をさせてもらいました。後に自治会長さんとお会いして自治会の承認をいただき、館長をさせてもらうことになりました。

―いよいよ館長に。どんなスタートでしたか?
正直最初の3年間はたくさんの意見や要望、中には苦情、それにひとつひとつ対応するのに精一杯でした。館長不在の時期もあったからか、一気に来た・・・という感じで。

―例えばどんなことがありましたか?
公民館は基本的に飲食禁止なんですが、行事、企画で飲食を伴う場合は事前にご連絡いただいて状況に応じて許可しています。ですがその際のゴミの後始末ができていない、あるいはトイレのごみ箱におむつが捨てられていたというマナー、ルール違反の報告がありました。ゴミから悪臭や虫が発生し不快で不衛生なので、私は公民館内のすべてのごみ箱を撤去しました。ゴミ箱がなくなったことで、何でごみ箱ないねん、ごみ箱いるやろという意見がたくさんきましたが、ご理解いただけるよう経緯を説明しました。ほかにも高齢の方がつまずく原因だった玄関マットも危ないので撤去しました。公民館の利用は無料ですが、皆さんが安全に気持ちよく使っていただくためにはマナーとルールを守っていただくことはもちろん、気づきと対応、そして皆さんのご理解が必要なんです。私が女性ということで、いい意味でも悪い意味でも意見を言いやすいのかもしれないですが、むしろそのことでいろんな声が聞け、改善できるところは改善してきました。女性だからこそ気付けること、できることがあるんだと思っています。

―蔵永さんご自身は館長になる前からこの公民館を利用していたんですか?
はい。お花のサークルの講師として利用していました。私は普段はお花の仕事をしていますので。

―では蔵永さんご自身も利用者側として以前からこの公民館について感じていたことがあったんでしょうか?
ありました。正直、借りにくい公民館、だからあまり人が集まらないのかなと。住宅地の真ん中にあるのに利用者が少なく、サークルはほとんど高齢者向きのもので若者向きのものが少なかったです。大勢の人や子供が集まると騒がしいのではとか、利用頻度が多いと都度鍵の開閉や掃除等、管理が大変だという理由もあったかもしれませんね。サークルが終われば施錠のためすぐにここから出て、団らんの間もありませんでした。せっかく立派な公民館があるのに生かされてないと思っていました。

 

―では館長になってそのあたりに取り組まれたのでしょうか?
はい、利用者を増やすということに尽力しました。利用者が少ない、というのはサークル自体が少ないんです。当時、登録数は20くらいありましたが、実際に活動してるのは10くらいだったように思います。増やそうと思いましたね。子供さんから高齢の方、文化系から身体を使う体操等いろんなサークルを徐々に増やし、現在40近くのサークルがあります。

 

館長で会長。兼任でいいことばかり

―具体的にどうやってサークルを増やしてこられたんですか?
とにかく声をかけました。当時、私は子供の学校関係で多くの保護者の方達と交流があったので、その方達、ママ友ですね、に声をかけました。趣味とか何かしたいことがあったら、こんなかたちで始めてみない?って。サークル開講の説明とか今なら何曜日の何時から空いてるよと時間帯を教えてあげたり。そうやって続けていると、やってみたいと言ってサークルを作って、公民館を利用し始めてくれました。そこからは徐々に口コミで広がり、問合せや利用の申し出がくるようになりました。過去に断られたサークルも再度問合せをいただき、活動しています。

―やはり、利用しやすくなり、多種多様なサークルの開講により利用者が増えてきたということですね
そうですね。公民館をいろんな世代にいろんなサークルや用途で使ってもらって地域を活性化したいと思い取り組んできました。問合せがあれば最初に目的や詳細をお聞きしてからこちらのルールも説明し、ご理解いただいて利用してもらいます。騒がしいのでは?汚れるのでは?と最初からマイナス要素だけに目を向けるのではなく、まずは利用してもらってそれからの対応かなと。もしルール違反があればどうやったら皆さんが気持ちよく利用できるかを話し合います。無理なら利用をやめてもらうことになるかもしれませんが、それは仕方のないことです。でも今まで、そんなことは全然なく、皆さん継続して活動しています。

―蔵永さんが思い描く公民館がかたちになってきたんですね。対応に追われた最初の3年間等、辛かったり辞めたいと思ったことは?
私、そういうの一切ないんです。逆に燃えるタイプで笑 例えば、子供達がここで遊んでうるさい、ボールが飛んできたという苦情があっても、それを公民館や子供達のせいにして私がすぐにここで遊ぶのをやめさせることはできません。まず可能であれば直接お会いして苦情の詳細をうかがいます。そして館長としてできることの範囲を説明して、まずそれをご理解いただき、そこから先は内容に応じて学校や教育委員会等、相談先を伝えたり、一緒に付いて行くこともあります。そこで一緒に対応策を話し合い、学校と公民館、そして地域の方が繋がれることで今後、何かあったときの連携もスムーズです。私はただ純粋にこの公民館を使ってもらって地域を活性化したい、ただそれだけなのでどんなことでも真正面から対応する自信があるんですよね。

―田園公民館の特徴は?またやりがいは?
田園地区は他の地域とは違って、大阪とかいろんなとこからここへやってきた人達が集まった地域でもあるので、こういう交流の場を探しておられる方も多いんです。他の公民館に比べてサークル数も多く、コミュニケーションがすごくとれてるっていうのが特徴であり、その様子を感じたときがやりがいですね。私は田園地区の婦人会の会長もさせてもらってるんですが、コロナ禍でなかなか集まることができなかった時期、約40名の会員ひとりひとりをのお宅を訪ねました。そのときにも改めてコミュニティの強さを実感でき、やりがいを感じました。

―婦人会会長も?! それもオファーがあってですよね・・・兼任はさすがに大変では?
まっっったく笑  公民館活動で婦人会の皆さんとは既に知り合いでしたので、会長といっても引きつづき皆さんとご一緒させてもらうだけ・・・という感じで引き受けました。館長のとき同様、延長線のような感覚でしたし、婦人会の会合も館長で会長の私がここにいることで公民館の空き状況の把握ができ予定や連絡がスムーズにいくので、別々の人がするよりむしろ館長も婦人会会長も同じ人が兼任した方がいいことばかりだと思っています。

―そのバイタリティーとポジティブの秘訣は?
入り込まない、背負い過ぎない、そして私自身が世話好きなタイプ。お世話し過ぎもよくないけど、お世話すると頼ってくれるでしょ。学生の頃から「私に任せて!」みたいなタイプでした。これしたい!とか、しようよってなると、0から1、いや1以上のことをしたいし、困難であればあるほど燃えるのよね笑。で、立ち上げた後は執着しない、次やってもらえる人を探してすっと辞める笑。放置じゃないですよ笑 身体が丈夫で動ける間にいろんなことを立ち上げておいて、後は次の方に。できた!さぁ、次何しようみたいな笑 切り替えが早い?飽き性ともいうよね笑 出来上がったことは大事にしたいけど、後にそれがなくなったとしても何で?!とも思わない、仕方ないなくらいで。

―見習いたいです・・・
何でも楽しんでした方がいいでしょ?笑 私は館長といっても自分も仕事をしてますし、ここや自宅で一日ずっと居る訳ではないので、可能な範囲で各サークルの責任者の方に鍵の開閉をお任せしています。何かあればすぐ連絡くれるし、連絡事項をメモして机の上に置いといてくれるので、不具合箇所があればすぐに修理の手配をするなど早急な対応を心がけています。皆さんの携帯電話の連絡先を教えてもらったりなど、やはりお互いに信頼関係がないとできないことですし、皆さんがとても協力的だから助かっています。

―頼もしいですね。蔵永さんみたいな人がリーダーだと。
性格やね。自分でいうのもなんですが、きっちりし過ぎない、臨機応変?だからみんなやりやすいんじゃない?って勝手に思ってる笑笑 大変ですね~って言われるけど、そもそも何が大変なのかが分からへんねん笑。昔からPTAの役も引き受けてきたけど、やっぱりそういうのってその人の性格とか含めて向き不向きってあると思うねん。あ・・・私が向いてるとか、やりたいやりたい!ってことじゃなくて、私は別に役することが嫌じゃないから、私するよ、じゃあ、〇〇さん、〇〇係して、で、△△さんはこれしてなって指名するし、指示する笑 その方がうまくまわるし結束感も強くいいものができると思うんですよね。

―そうですね。でもなかなか蔵永さんレベルにはなれないです笑
まぁ、ある程度の年齢やからっていうのもあるかもしれへんね。人と人やからいろいろあったりするし。私は何か言われても冷静に受け止められるし、何なら直接聞いて、思ってること全部吐き出してもらうねん。上から言われたとしてもそもそも私より年上やから当然か・・・とか、尊敬する部分は尊敬し、毛嫌いせずに対応しているとその人の本質は見かけとは違うことが分かって、それからは普通に話するようになったりね。ここに来られる方は、皆さん最後にそれぞれの理由をちゃんと伝えてくれ、「ありがとう」と言ってやめていきます。8年間ここにいると、ご年配の方から退部届を受け取った時、その方の年老いていく様子も感じとれ、いろんな思いがこみ上げ涙が出そうになるんですよね。

 

なんとかなるでしょ

―最近ではどんなことに取り組んでいますか?
「ふれあいカフェ」という企画を3~4年前から始めました。ご高齢者さんを中心に、月1回ここでお茶を飲みながらお話しするというものですが、その実現が私にとってはすごくうれしかったというか、企画としてとてもよかったし、継続していきたいんです。特にコロナでこもりがちになったのもあって、やっぱり外に出て人と会って話してほしい、顔を見せに来てくれるだけでもいいんです。4月からは週1回の頻度に増やし、歌声サロンや卓球など他のサークルとのコミュニケーションもあるのでぜひ遊びに来てほしいと思います。

この日はウクレレ・手話サークルの方達を招いて 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―何でも楽しんで取り組む蔵永さんですが、なかでも特に楽しかった思い出などありますか?
田園公民館のバス旅行かな。コロナ前は毎年行っていました。先着順とか、ご年配の方中心になってしまうんですが、サークル活動とはまた違ったプライベートな交流ができ、より繋がりが強くなってとても楽しかったです。

―当然、企画は蔵永さん?
もちろん!新聞広告のバスツアーのチラシをみて、絶対下見に行きます笑。京都とか神戸とか、他の役の方と一緒に。一番重要なのが食事・・・笑 だって食べてみないとわからないでしょ?で、他にも楽しいとこ下見して喜んでもらえるかを見極めてくる。下見も楽しみ、本番も楽しむ、いかに安くおさえるか・・・、そういうの自信あるねん笑

―今後の夢は?

「ふれあいカフェ」から「ふれあい食堂」にしたいです。子供からお年寄りまで利用できるふれあい食堂。これもなかなか道のりは険しいかもしれないですが、そこはさっきからお話ししてきた通り、困難であればあるほど燃えるので・・・笑

 

―五條市についてどうお考えですか?
五條市は私が好きで選んでやってきた街です。昔、大阪に住んでた頃、主人がここを通ってテクノパークへ仕事に来てたんです。ちょうどこの田園という街ができていくところでした。休日には子供達を連れて吉野川に遊びにきたりして、この自然に囲まれた街に住みたいと思ったんです。こんな田舎・・・ってみんないいますけど都会暮らしだった私はそこがいいんです。山や川、自然と調和できた都会じゃないところが好きなんです。不便さが町並みを守っていると思うし、古き良きものは残していってほしいと思います。私が新町通りで花嫁行列を企画したのはそういう思いからなんです。五條市だからできること、五條市のいいところを知ってもらいたいんです。地元の方はこの自然が当たり前かもしれないですが、これから私もどんどん歳とっていくし、こんな空気のいいところで住んでるなんて幸せですよ。不便でも、車が乗れなくなっても、この時代ですから何とかなるでしょ!

―蔵永さんなら大丈夫です!今日から私も「蔵永魂?」を見習いたいと思います笑
本日はありがとうございました。

五條市田園公民館
住  所 五條市田園4丁目14-3
電  話 0747-23-1511

☆スタッフHのすぽっとwrite☆

圧倒的なリーダー気質とポジティブ精神。その行動力と人柄に思わず、頼れる「兄貴」みたいです・・・と言ってしまい(汗)でもそれはとてもサバサバしていて付いていきたくなる大先輩という意味を伝えたかった訳で。(シツレイシマシタ)

「ふれあいカフェ」当日、おひとりで受付から司会進行、サプライズ企画、お茶出し、その合間にはおひとりおひとりに声をかけ会話もしっかり楽しんでおられた蔵永さん。その合間にコソっと私にみせてくれたのは早くも次回の企画案。やっぱりすごい方ですね、兄貴・・・いえ、蔵永さん。