第45回 岡忠商店 岡田 光宏 さん

今も先代の想いを受け継ぐ「文房具屋」さん

明治時代から続く「岡忠商店」。ひとえに文房具といえど奥深き・・・。そんな代々受け継がれた店主の想いを5代目ご主人にお伺いしました。

「岡忠」さんのお店の経緯を教えていただけますか?

ご主人)私で5代目です。

奥さん)だいたい明治3年からの創業と聞いています。

明治3年?!

ご主人)もともとは紙屋やったんです。

時代劇とかでよく見る大福帳や和帳などを作ってました。紙を仕入れ手作業で裁断し、折って、糸で綴って商品としてました。

それを何年位されていましたか?

ご主人)祖父までで父親からは文房具店になりました。

その文房具をやり始めたのはここでですか?

ご主人)以前は商励会通りにあったんです。

 

そうなんですね。昔はあの通りも人であふれてたって聞くんですけど、こちらに変わられたきっかけというのはどうしてですか?

ご主人)一番の問題は車社会になって駐車場が必要となり今の場所に移転をする事になりました。
昔は歩いてる人が多かったけど、本当に今は車移動が多いですからね。

 

 

※写真上は当時(1950年頃)商励会通りにあった時代のお店風景

※写真下は現在の商励会通りのお店跡地

それで、ここに移転されたのはいつ頃ですか?

奥さん)1990年・・平成2年です。

紙屋さんから文房具をやろうって思ったきっかけは?

ご主人)それは父親からは聞いてないですね。

奥さん)やっぱり紙から始まったんじゃないでしょうか?そこからノートとかに繋がってると思います。

ご主人)戦後日本が高度成長から急に発展しだして商業形態が変わって来たと思います。売れる物の変化に合わすようになったのでは・・・。

紙だけではっていうところで文房具も・・・

ご主人)そうなったと思います。

 

 

―ところで「岡忠」さんの名前の由来は?

ご主人)名前は先祖さんに「岡田忠○」って付く人がいて、そこから付けたんです。だから名前が由来ですね。

奥さん)岡忠として始めたのは忠八、忠七さんが二人でされたみたいです。その後、2代目3代目と続いていって・・・。

お父さんが4代目で主人が5代目ですね。

明治時代からですもんね・・・

代々続いてきた文房具屋の商売の中で、ご自身も「継ぐものや」っていう意識があったのか?それとも他にやりたい事があったのか・・・いかがですか?

ご主人)やりたい事はあったけど、そっち方面の勉強があんまり得意科目ではなかったから・・・。実をいうと生物とか・・遺跡とか・・研究したい方だったんです。生き物が好きだったから。そういう方面に行きたかったけど・・・数学が苦手で諦めました。

継ごうと思ったのはおいくつの時?

ご主人)大学出てからかな?2年程サラリーマンをしてました。こういう関係の。でも、店が忙しくなり母親から戻って来て欲しいと言われ継ぐことになりました。

奥さん)その時分は結構忙しかったんです。

ご主人)始めたころとは全然ちがうんですよ。

奥さんが嫁いで来られたのはいつ頃でしょうか?

奥さん)このお店が出来た時。1990年。あちら(商励会通り)にあった時は知らなくて。ちょうど結婚が決まってからなので、引っ越しは何も手伝って無くて・・・(笑)

奥さんは地元の方・・?

奥さん)私は和歌山。

文房具屋さんに嫁いでこられて最初どうでした?

奥さん)楽しかったですよ。物珍しさもあって・・・。
最初は母親との約束で、遠くへは行かないと・・粉河くらいまでと。
それと商売屋さんには行かないと・・・いろいろ言いながら・・・。
なんだけど、御縁があってこさせてもらって。

今は本当に良かったと思ってるし、楽しいし。

お父さんもいろいろ教えてくれたし仕事も任せてくれたんで有り難かったです。

お父さん(先代)はどんな方でしたか?

ご主人)仕事人間でしたね。ほとんど休まなかったです。
正月も店開けたいって・・・。元旦くらいかな?店を閉めてたのは・・・。

奥さん)でも、ほんとは開けたいんだけど、お母さんに「一日くらいゆっくり休んだら」と言われて元旦は開けなかったんです。

本当に仕事が大好きだったのですね。ご主人はその跡を継いでその思いっていうのは?

ご主人)そこまではないですね・・。

そうなんですね。

嫁いで来られて奥さんはどうでしたか?これだけ(種類)あったら覚えるだけでも大変ですよね?

奥さん)全然知らない物じゃないから、身近に普段使ったりしている物やったから「あーこれはこんなんなんや」とか「あっ、こういうふうにいろんな種類あるんや」とか初めてそういうのも見ながら・・文房具って楽しいなって。

文房具について

その「文房具」についてですが、売れ筋とか流行りってありますよね?
たとえば画期的な文房具とか・・・。針なしのホッチキスとかは初めて見た時は衝撃でしたけど(笑)

ご主人)あー「ハリナックッス」な!あの辺も出はじめは物珍しかったけど今はあんまり・・・。今は、消せるボールペンの「フリクション」とか・・。

 

 

あっーーー!あれもすごいですよね!あれも良くでますか?

ご主人)よく出ますね。修正テープとかテープのりとかもよくでます。

・・というか
本体あって替えもってなったら、すごい種類ですよね?

そんな豊富な文房具で特に思い入れがある商品とかは・・・?

ご主人)なんやろうな・・・?

奥さん)シャチハタっていうメーカーの印鑑は朱肉がなくても
(3文判)がおせるっていう商品も画期的ですね。

文房具ってすごい進化遂げていますよね

ご主人)パソコンとインターネットが出だしてからだいぶ売れるものが変わって来て、紙以外にも記録が出来るUSBとかCD-Rとか・・いる時だけ印刷するから紙が売れなくなってきてますね。帳簿も最近は売れなくなってきたし。
最初はそういう帳簿関係の専門店みたいだったけど、だんだん変わって来てます。

でもやっぱりどうしても書く作業って必要じゃないですか?
なんぼパソコンあるからってゆっても絶対にメモとかは書きますもんね

ご主人)何かしらは書かんなあかんから・・。

書きますもんね
だからそこの原点ていうか・・「紙とペン」大事ですもんね!

新商品の仕入れとかはどんなルートで?

ご主人)発売になったらメーカーさんが持ってきてくれて、売れそうな商品を判断して仕入れます。

展示会とかは?

奥さん)今まで奈良であったけど、最近は大阪でしかないのでなかなか行けてなくて・・。だから問屋さんが見本市のデータを持ってきてくれるんです。

ご主人)昔はテレビとか情報媒体が少なかったから見に行かないと分からないから行ってたんだけど、最近はインターネットでも見れるし、わざわざ行かなくても検索できるのでそういうのが減って来ましたね。

―お店の得意先は今何軒くらい?
うちの会社もよく注文させて頂いてますけど・・。

奥さん)今は100件くらいかな?
でも大まかに大きいお得意先は10件くらいですね。

今、文房具の買う手段として、アスクルとかカワネットとかインターネットで気軽に買う方法とかありますけど・・・

奥さん)そう・・事務員さんが若くなって来てるでしょ?
そうなるとやっぱり通販で買うっていうのが多くなって・・私がお嫁に来た時から比べると、やっぱり減りました。
請求書は手書きで書いているんですけど、以前は2日ほどかけて作業してたのがもう1日あれば十分書けるっていうふうになってきました。

件数も減り、商品の数も減り・・
いまはどこでも売ってるし・・スーパーでも百均でも・・。ただ特殊な帳簿とかはいまだに買いに来てくれますが、やっぱり若い事務員さんのところはネットになっていってますね。

それでも、いまだに岡忠さんとずっとお付き合いある企業さんは有り難い・・?

そうですね。ずっとっていうところは有り難いなって思います。

 

でも実際、来て、見て、選べる、っていうのもお店構えてないとなかなかできませんもんね?

 

奥さん)まあそれもありますね。
来てみて「あっ、これこんなんのあるねんな」って・・あるけども・・。
今はあんまり特殊なのはそんなに発売しないし。

それに、今は車時代やから大阪に行ったりしたら、商品もいっぱいあるし、最先端の商品も多いし、新製品も多いし・・。

だから問屋の人が「コレ売れてます」って持って来てくれるけど「これはうちの客層じゃないかな?」ってなりますね。

ご主人)年配の方が多いからね。

そういえば、わたし事務員をやり始めたころ、キングジムの大きいファイルの開け方が全然わからなくて(笑)
押して開けるのか・・?どうやったらコレ開けれるんやろう?って(笑)苦戦したことがあります。
テプラもほんまに使い方がわからなかったです!

奥さん)テプラね!テプラはすごい!
いまだにテプラは良く売れます!
あれはキング(ジム)さんの大ヒット商品ですね!

やっぱりあるんですね、各メーカーさんでヒット商品が

ご主人)ありますね
売れたら他のメーカさんが真似して作るけど・・・。

奥さん)パイロットの「ハイテックCコレット」っていうのがあるんですけど、本体を買って芯をいろいろ入れ替えれるっていう商品なんですけど。

それがすっごく売れたんですよね。後に三菱さんが同じような物を出して「置いてほしい」と言われたけど同じ物を置くスペースもないし、どちらかが売れ残る可能性もあり、お断りした事もありましたね。

そうですね、お客さんからしたらメーカーあんまり関係ないですもんね

 

お店のこれから

―これからどのようになっていけたらと?

奥さん)ゆくゆくは、お店だけになって、細々とでも続けていければ・・・ね。

ご主人)まあ配達もなくなって、店で売れるようになってくれればと思ってます。

それもお店に来てもらって顔見ながら接客出来るっていう楽しみになるやろうし・・。

五條で文具といえば「岡忠さん」っていう・・五條市ってそういうのがあると思うんです。会社の社名入った社判とか頼むときは「岡忠さんにゆって」っていう・・。

 

奥さん)そういう風に言って下さる年代の方が段々おられなくなってきたら・・やっぱりなかなかね・・。とは思います。

わたしも小学生のころ文房具を集めたりしてましたけど、いつも友達が持ってる文房具が自分が持ってない文房具で。「どこでこうたん?」ってきいたら「岡忠やねん!」って。それで「どこ?」ってなって。

それで、岡忠に行ったんですけど、初めて行ったときの衝撃が忘れられなくてもう種類がね、いつも行ってるところよりもいっぱいあって・・・。

いつも決められなくて・・おじいちゃんに「もう決まった?」って聞かれながら・・(笑)でもそこから厳選して買ったっていう、忘れられない思い出がありますね。

奥さん)お父さんは一見怖そうに見えたけどそうじゃなくて。
未だにお父さんの思い出を語っていってくれる人もいてるので、やっぱりすごいなって思います。
ただ、商売に関しては厳しい人でした。

だんだんとネットの時代になって来た時、取引先に見積りを出して価格を決めたとき、「ネットでこれくらいやからこれくらいにならへんの?」ってお客さんに言われた事があって

でも、お父さんは長年の付き合いがあって「そんなに言ってくれるんだから」って、利益度外視でって値引きをして、その事についてお父さんと主人と私と一度だけ少し言い合いをした事もありましたね。

 

そうですね。そこのバランスは難しいですね。

奥さん)そこがやっぱり昔から店をしてきたからこそ・・・ていうので、お客さんとの「信頼関係」を大事にしてきたのだと思いますね。だから私達も出来る限りお父さんの考えを続けられたらと思っています。

 

そうなんですね。すごい勉強になりました
どっちの考えも間違ってないし、時代もあるからそういうやりかたも取り入れていかんなんし・・。

ご主人)出来る限りお客様のご要望に応える事が出来れば次回も注文してもらえる事もあるかもしれないし。

そうですね。
安いからってゆって飛びついてくるお客さんは、次安いとこ出たらすぐそっちに行かれるけど、そこを人付き合いで繋いでおいたら、また次来てくれる、っていうのもあるかもしれないですしね。

ご主人)それが難しいとこですね。

でも、このネット時代だからこそ、結局「人」と「人」っていうところですよね。

五條について、五條市の魅力とは

奥さん)自然災害が少ない。

それと娘が家を新築するにあたって、大阪とかも土地を探したけど結局こっち(五條)にたどりついたんは、交通の便以外に、子育てに適してる・・やっぱりここは良いと・・子育てしやすいから、って言ってやっぱりこっちにで探す事になって、おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいた所へ建てる事になりました。

だからそういう面では子育てとかには良いのかな?って思いますね。

 

ご主人)まあ平和で争い事がないですね。
住むのにはいいとこだと思う。ただ市場としてはちょっと狭い
昔ほど栄えてないし・・人口減って来てるし・・。

そうですね。
昔は吉野川で栄えた五條市やけど、なかなかそれが閉鎖的になってきて・・もしかしたらだんだん市場が狭くなってきたのかもわかりませんね。

ご主人)スーパーとかコンビニとか大型店舗とか増えてきたし、ホームセンターなんか行ったらなんでも売ってるし。そういうところに行きがちなので、そんな事もあると思います。前とは商業形態が変わってきてるなと思います。

通販でもアマゾンとか手軽に購入できるし、なかなか市内の業者に行かないようになって来てる。自分らも行かないのでボヤいても仕方ないんですがね。どうしても便利な方に行ってしまいますよね。

そうですね、便利な方にいってしまいますね

ご主人)わざわざ買いに行かなくても注文したら明日には届くし・・・。

でもこうやってお店に来させて頂いて、文房具手に取って見たら、ワクワクするし「こんなんあんねんや!」って

ご主人)たまにいますね。見るだけでも良い人も(笑)

文房具って奥が深いから見てて楽しい・・。
それこそ1個の商品に対しての枝分かれとかすごいですしね。

 

ご主人)そうですね。テレビ見てて、ドラマとか・・すぐ見てしまう・・(笑)

文房具を?

ご主人)会社の場面で、ファイルとか映ったら、「どこのメーカーやろ?」とかすぐ見てしまう(笑)

それは職業病ですね(笑)

ご主人)東京やったらここのメーカーが強いんやとか、関西であんまりでてないのにな・・とか。

着眼点がやっぱり違いますね!
私やったらそこはスルーして見てる気がします(笑)

以前、インタビューしたお店で眼鏡屋さん行ったときにお話ししてくれましたけど、やっぱりメガネばっかり気になるって。「このメガネ・・・」って(笑)

 

普段見慣れている、文房具がたくさんの店内。
しばし時間を忘れ、探索に没頭してしまいました。

 

岡忠さん!本日はありがとうございました!

 

 

 

 

事務用品・事務機械・紙製品
 ☆岡忠商店☆

 

☆住所   五條市五條2-3-16
☆電話   0747-22-2161
☆FAX  0747-22-2185
☆営業時間 8:30~18:30
☆定休日  日曜日・祝日
☆駐車場  あり

 

 

 

☆スタッフ森子のつぶやき☆
おそらく「文房具」を使ったことがない人はいてないだろう・・・。
わたしも、数々の文房具と出会い、手にしてきた。
ひとえに「文房具」とは言えど確かに奥が深い!そんな「文房具」を売り続けて100年以上・・・!
進化を遂げる「文房具」とともに、大切にしてきた「想い」。
その想いはいつまでも色褪せることなく、受け継がれていくことを願いながら・・・。