第7回 伊勢屋豆腐店 西村 富士男さん・利江さん 

安心安全なものを作りたい。その一心でやってます。

―伊勢屋豆腐店さんの歴史を教えてください。

(西村富士男さん 以下同)昭和48年、23歳の時ですね。五條市で当時の店名ニチイ、今はイオンさん、に出店したのが、私の出発です。今年で42年目になります。ずっとそこで製造、販売してたんですけど、9年前にこの田園の店舗へ移って今はここで製造、販売してます。


―豆腐屋さんを始められた経緯は?

私は石川県の能登半島の出身で、父は公務員、兄は農協に勤めてました。でも私は豆腐をやってみようと思いまして、10代で大阪のお豆腐屋さんに修行に行ったんです。住み込みで6年半ぐらいだったでしょうか。その間、辞めていく人がほとんど。やっぱり、朝は早くて仕事はきついし、親が恋しくなったりとかでしょうね。それでも私は残って修行を終え、暖簾分けをしてもらったんです
 

―大阪で修行された後、五條市に来られたのは何か伝手や理由が?

いいえ全くですよ。五條市には知り合い、親類がいた訳でも、私が行こうとした訳でもなく、修行先から暖簾分けをしてもらう時に、五條に行きなさいみたいな感じで(笑)。でも、住めば都、五條はいいところですよ。

 

―喫茶店のようなこのスペース、試食用のスペースなんですね!田園のこのお店を作られたきっかけは?

スーパーの中はね、やっぱりある程度の制約があるでしょう。スペースであったり、サービスであったり。私はお豆腐や新商品を試食してもらいたいし、豆乳も飲んでもらいたい、それでお客様の反応も見たかったし、もっとひとりひとりのお客様とコミュニケーションをとりたかったんですよね。だからこの試食スペースは絶対作りたかったんです。やっぱり自分の店っていいですし、国産大豆で作ったお豆腐はこんなに美味しいんだよってわかってもらいたいですしね。
だけど、今年で42年目、スーパーの中でやってた頃からのお客様も、高齢になられたり、こっちまで来れなかったり・・・。だからイオンさんの方に商品だけは今も置いてるんですけどね。

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―この坂本龍馬の写真は?

龍馬が大好きなんです。素晴らしい人ですよね。その横に飾ってる写真は私。還暦の記念にチャンチャンコ着る代わりに龍馬の衣装を着て京都伏見で撮った写真です。ちょっと化粧し過ぎなんですけど(笑)

―豆腐作りへの思いを聞かせてください。

安心安全なものを作りたい お客様に安心安全本物の豆腐を食べていただきたい その一心でやってます。私自身、農薬で体を壊したことがあって・・・40年ほど前だったかな・・・だから自分が作るものはすべて安心安全なものを作りたい。商売を広げようとか大儲けしようとか、そんな気持ちは全然ないですね。

DSC00177「美味しさ」は二番目。一番は安心安全な材料。でも裏を返せば安心安全なものは美味しいんです。それははっきり言えますね。週に2回だけ、頼まれた方だけ発送はしてますけど、それ以外は配達や卸しは一切お断りしてます。それ以上そっちに力を入れると来てくださるお客様にお断りしないといけなくなったりするでしょう。やっぱり来てくださったお客様最優先ですよ。
自分の容量、能力以上の事をしようとすると必ずどこかで手抜きしなくちゃならなくなりますから。

 

―「医食同源」をモットーにされているとお聞きしましたが・・・「医食同源」とは?

はい。「医食同源」。グルメという意味ではなくて、「良い食事」です。良い食事は健康の源ということです。私も65歳になる今日まで元気に働いていられるのはやはり食事だと思っていますからね。海のもの、山のもの、里のもの・・・バランスの良い食事ですよね。

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豆腐づくりに関して言えば、やはり1に大豆、国産大豆100%、2ににがり、3に水、そしてその後に技術が来るんじゃないでしょうか。安心安全ないい材料があって、そこに機械や炊き釜、作り手の技術が加わってこそ出来上がるんだと思いますよ。

 

―たくさんの商品に驚きました。これらはすべて店内にて手作り無添加で製造されてるということですか?

 

DSC00281そうです。豆腐類だけでも30種類くらいありますね、その他に揚げ類や、豆腐コロッケなどの惣菜類、豆乳を使ったスイーツ類、種類は多いですよ。豆腐や惣菜だけに留まると範囲も狭まります・・・だけど、デザートも作れば食後に、お風呂上りに・・・とまた食べてもらえますし、お土産にもしてもらえるんですよね。いろんなバリエーションの商品があればお客様にも楽しんでもらえますしね。いろんな種類から選べるって楽しいじゃないですか。だから、見た目のパッケージなんかもきっちりしていかなきゃと思ってます。

 

DSC00178 DSC00188 この日も豆乳でできた杏仁豆腐、黒砂糖と蜂蜜入りのところてん、黒ゴマ豆腐にゴマドレッシング、豆乳・・・たくさん試食させていただきました♪

 

 

―新商品はどうやって考案するんですか?

たくさんの種類の商品、すべて考案は私です。そのためにもデパ地下にもよく行きますし、インターネットで取り寄せもします。井の中の蛙になってはいけないと常に思ってます。いろんなところに行って、いろんなものを食べてそれで、自分が納得できる材料で作ってみます。常にアンテナをはって、「LET’S TRY」 まずは試してみる、やってみる です。何でもやってみないと分からないですから。そして判断はお客様。もしお口に合わなかったらもう買ってはくれないしリピーターにはなってもらえないと思いますから。
10~20種類考案しても、実際お店に出せるのは1種類あるかどうかってとこです。そんな簡単にはいかないですしね。今はね、考案中の豆乳をつかったデザートの開発にとりかかってますよ。

 

―豆腐作りは朝も早くて大変なお仕事ですよね。ハードな毎日の中、やりがいを感じること、嬉しいことは?

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そうですね。毎日14時間、妻やパートさん達に助けられて働いてます。うちは商品の種類が多いから大変ですよ。でもこの辺りの住宅街の方、市内、県内の方、たくさんのお客様が来てくださって、土日なんかはほぼ県外からのお客様です。皆さん、ついでに買うんじゃなくて、わざわざ来て買ってくださる。有り難い事です。リピーターのお客様がお土産にと買って帰ってくれて、それを食べた方が美味しかったといってまた来てくれる。あと、ご夫婦揃っての来店もそうですが男性の方がたくさん来てくれます。私は男性や若い方達に支持してもらえるお店を目指してましたので、それは本当に嬉しいですね。安心安全な豆腐を美味しいね、と言ってもらえる、そしてまた来てもらえること、ですかね。

 

―困っている事は?

今、国産大豆が非常に高くなってきてましてね・・・
アメリカの大豆に比べて国産大豆は6倍~7倍高いんです。うちの豆腐はスーパーのものと比べると値段は2倍以上高いと思うんですけど、原材料は7倍近くかかってるんですよね。それでもやはり安心安全なもの仕入れて皆さんに食べてもらいたいですから。

 

―五條市に住み、そしてお商売をされてきて感じることは?

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修行を終えて五條に来た当初は大阪の環状線の何ともいえない臭いが恋しくて早く帰りたくてねぇ・・・
でも今は反対・・・大阪にたまに行くと早く五條に帰りたくて(笑)やっぱり、住めば都。五條は自然が多くて四季折々の景色が好きですね。人口が減ってきてるのが寂しいですけどね。イオンさんの店内で仕事してた時は外の景色が見えませんでしたが、このお店で毎日仕事をしながら見える窓の外の夕日や、四季折々の景色なんかはいいですね。

 

―これからの展開は?

この先の事は、まだどうなるか分かりませんけど、私もロボットじゃないし、不死身じゃないので、やれるとこまでやってこうって思ってます。
「昔と変わらぬ美味しい味」って、必ず昔より美味しくなってるはずなんです。美味しくなってないといけないんです。お客様の舌も昔より肥えてきているはずですし、昔より進化して美味しくなってるから昔と変わらず美味しいねっていってもらえるんだと私は思ってます。

DSC00203 後何年できるかわかりませんけど、できるとこまで安心安全なもの作ってお客様に美味しいねと喜んでいただきたいですね。わざわざ来てもらえるに値するだけの商品を作っていかないとって思っています。

店先に天日干しされていた国産天然天草。 ところてんの材料だそうです。

 

 

西村さん、本日はありがとうございました。

 

DSC00205伊勢屋豆腐店

住所    奈良県五條市田園4-9-8
TEL/FAX  0747-25-0330
営業時間  9:00~19:00
定休日   毎週 水・木曜日
駐車場   有
※HPはこちら

イオン五條店
奈良県五條市今井2-150
(イオン五條店内)年中無休


☆スタッフHのすぽっとwrite☆

「美味しいものを美味しく食べられる」当たり前のことのようですが、本当に幸せなことです。年齢と共に食の好みも変わり、ワラビやゼンマイ、ふき等の山菜類、香りが苦手だった山椒や春菊・・・、今ではその味、香りたたまりません。
今の季節なら、トマトやピーマン、茄子などの夏野菜(とビール?)は最高にたまりませんよ・・・ね!?ウナギや、ハモ(とビール?)、最高ですよ・・・ね!?
毎日の食事を作るのは大変ですが、「医食同源」をいつも心に留め、バランスのとれた「良い食事」を心がけたいと思います。