第51回  クラフト館(有限会社 扇屋) 代表 今井 勲 さん

 

 

    「地域になくてはならない」お店を目指して

ー 本日はお忙しい中、ありがとうございます。まず、お店を始められたきっかけなのですが…

僕の家は、元々は、五條の商店街通りで、「扇屋」という毛糸店を営んでおりまして、まあ言わば、家業を継承した、という感じですね。それで、平成6年の6月に現在の場所に移転させていただいたんですけど、それまで、大阪の大手毛糸メーカーの代理店に、卸売をするという営業回りの仕事をしていたのですけど、そこで9年ほど勤めまして、家庭の事情でこっち(五條)に戻ることとなって、当時まだ商励会通りにあったお店を継がせていただいたんです。そして、お店をやりかけた時、その当時、僕は五條市のボランティアのお手伝いもしていたのですが、その中で、現在のこの建物の、オーナーさんと出会って、お店をやってみないか、ということが現在のお店の始まりなんですが、その当時の商店街のお店は、駐車場もなく、車社会になっていく中、(商励通りのお店は)ちょっと違うな?と思いまして…  ただ、「扇屋」のお店はたたむのではなく残したままで。

ー その意図はどのような?

イメージとしては、業態が以前までの、「扇屋」さんと同じだと、決まった客層のかたばかりに固まってしまうので、「扇屋」が、毛糸と婦人服を扱っていたのを、こちら(新しいお店)では、「手芸店」という専門的な趣で、ということでですよね。「扇屋」では扱っていなかった布、トールペイント※やパッチワーク… そういったものを新たに広めていきたいという思いで、平成6年からですから… もうこちらにお店を構えて、もう丸25年になりますね。ですから、きっかけと言われましたら、元々の家業の継承、ということですかね。ただ、新しく今の場所でお店をオープンするにあたり、「さあ頑張ろうか!!」という強い志で最初は始めたわけではなくて、軽い気持ちで控えめに、やってみようかな?という感じが25年間続いてきたという感じかな。

※ 家具などの木製品に、絵具を塗る手芸のひとつ。

ー ありがとうございます。次のご質問なのですが、元々、代理店へ毛糸の卸売の営業をされていた、というお話をお伺いさせていただいたのですが、元来家業が、毛糸店をされておられたので、自然とそちらの方向へ、という感じででしょうか?

微妙ですね(笑)。高校を卒業してからは、大学、という選択もあったのですけど、そんなに勉強がしたい、という訳ではなくて、漠然と就職しようかな… という感じで。ただ、出身が普通高校で、そんなに求人とかもなくて、当時の僕は、こういうことがやりたい、という事もありませんでしたし、まあ… あんまり何も考えてませんでしたね(笑)。働いてみることも大切かな… と思っただけで、それでたまたま、勤めていた会社(毛糸の卸売の会社)から声がかかって、という感じですね。ですから、当時もし、五条ガスさんから(社員の)募集があったのなら、もしかして、今頃五条ガスさんの社員になっていたのかもしれませんし(笑)。

何らかの形で商売を

でも、会社員として9年間働いて、こちらに帰ってくる頃には、人に雇われるよりも、「商売がしたい」という考えがあったんかな?今はこういう商売をしているのですけど、もしそうでなかったとしても、違う何かの形で、商売してるんやろなぁ、って。ずっと会社勤めをするタイプじゃないと自分でも思っていますし。何ていうかな… ルート販売のような、同じお客さんのところをずっと、というよりは、今のような商売をしていると、新たなお客さんとの出会いや、その人との繋がりというものがありますよね。結局今日のこの出会い(インタビュー)というのは、今のような商売をさせていただいているからだと思いますし、ですから、同じようなメンバー、お客さんでずっと、という事が、自分にとってはあまり向かなかった、好きじゃなかったんかな… と感じますね。

ー では「お店を継ぐ」という考えは、当時はあまりなかった、ということなのですね。

全然なかったです(笑)。祖母が寝たきりになって、店番をする手が足りなくなって、その都合で帰ってきただけですから。ですから、もし祖母が元気でいてたなら、そのまま大阪にいたかもしれませんね。

お店の名前「クラフト館」込められた思い

「作る」という思いですね。「クラフト」って「CRAFT」と「KRAFT」と2つ綴りがあるのはご存知でしたか?頭が「K」で始まると、「紙」のクラフトなんですよ。これが、「C」だと、「(指先の)技能」とか、「技能士さん」の意味合いになるんです。ですから、うちは「CRAFT」の作業や、技能といった意味で。他に、いろいろ考えたんですけどね…「夢工房」とか…でも、近所見てたら意外と似たような名前があって(笑)。かといって、「扇屋」という名前をそのまま持ってくると、「扇屋」そのままのものが来てるんちゃうんかなって。ですから、心機一転という気持ちや、「扇屋」とは趣が違いますよ、という意味も込められていますよね。当時、お店を新しくオープンする時、やはり何もかも変えたいな、という思いもありまして。でも、この「クラフト館」っていうお店の名前も、だいぶといろいろ考えた結果なんですけど(笑)。

ー そうなんですね。私も、え?「クラフト」って紙とか工作とか… そういったイメージがございましたので、品目は刺繍や、手芸品なのに、どうして「クラフト館」なんだろうな… って。いまのお話しで、ようやく理解できました。

ー 平成6年に、こちらにお店をオープンされたということをお伺いさせていただいた訳ですが、オープンされた当初は、いろいろ苦労もされてこられたと思います。その当時のお話をお伺いできれば…

やっぱり、単純にお店の「売上」ですよね。やはりみなさんウチの事なんて全く知らないわけですよ。オープンした頃は、(お店の)近くにホームセンターがあって、今でこそ五條にはホームセンターさんも何件かありますけど、その当時はというと、五條にはホームセンターは、その1件しかなかったんです。ですからホームセンターに来られるお客さんも、それなりにいたんですけれど、そのお客さんが、うちに流れてくるわけではないんですよね。そのホームセンターさんと、うちとの距離はというと、たかだか20~30メートルほどなんですけど、(うちには)来ないんですよ。入ってもらいにくさ、とっつきにくさ、というのもあったのかも知れませんでしたけど。そして、お店の間口も、今のこのお店の隣だったんです。それも15坪ほどの小さなお店だったので商品もあんまり多く並べられない。ですから、苦労した、というのはそういうお店の売り上げ、という点でしょうね。それと、立地(国道沿いではない)から、お店の知名度ということはいかんともし難いものでした。ですからオープンして数年間は、チラシで告知して、それを5年10年やってきて、ようやく「クラフト館」というものが認知され始めて… 経費もそれなりにかかりましたね。でも、以前と比べて、「告知」ということは難しくなりましたね。昔は、「打てば響く」という感じで、チラシを打てば、それなりに反響がありましたけど、今の時代は、チラシをまいても、まぁ反応がないですよ。

ー それは私どもとて同じです。もはやチラシのみの告知は、本当に反響がない時代ですよね。

ですから、今の時代は、SNSとかそういったものをうまく利用しなければならないんでしょうけど、昔とは本当に告知方法が違いますよね。もはやチラシでは「打てば響く」というものは望めないですね。でも、チラシだけじゃなくて、消費者の考え方もですね。一昔前は、物を「貯めておく」という考えがあったんですけど、今はもう、「余分なもの」は本当に買わなくなりましたね。そこがまったく今とは異なると思います。でも、昔の時代のほうが良かったですよ。たとえ売り上げが悪くとも、チラシを出せばお客さんに響く…  という風にね。

若いころは「ガムシャラに」

お店をやり始めたのは27歳のころからで、開店当初は、先ほどもお話しした通り、確かに、売り上げを工面していくことに苦心したんですけど、齢も気持ちも若かった時なんで、「苦労」よりも「楽しい」という感覚のほうが強かったですね。逆に、後になればなるほど、苦労してる感じかな…(笑)。お店の営業時間だって、今は朝10時から夜7時までなんですけど、初期のころは朝9時から夜8時までやってましたね。とにかくがむしゃらに。ですから、そういったことも含めて、お店がオープンした、初期のころはとにかく「楽しかった」ですね。それと、オープンから(お店の)運営が軌道に乗り出した頃、休みを取っていろいろ遊びに行ったりもしました。当時は、幸いにも優秀なスタッフさんがいたお蔭で、自分がいなくてもお店がある程度回せたんです。確かに、忙しい時代ではあったんですけれど、忙しい時ほど取る「休み」というのが楽しくて仕方がなかった。ほら、暇なときに仕事を休んだって、虚無感というか、なにも楽しくないでしょ?

ー そうですね。我々サラリーマンと、お店を運営されていらっしゃる社長。立場は違いますが、同感でございます。

 

こんなとこにも「LINE FRIENDS」が!(詳しくは弊社ブログ「ぱわーすぽっ燈」7/9UP分参照)

 

 

 

ー さて、次の質問なのですが、大手スーパーさん、チェーン店等、量販店にない、「クラフト館」さんの良いところとは?

ご存知かどうかは分かりませんが、「手芸屋さん」って奈良県に限れば、数えるほどしかないんですよ。お店をやっていたかたが高齢になって、継承できなくなったお店は、実際のところはみんな(お店)をたたんでしまっていますね。でもこの「手芸」という業種は、僕自身、地域ではなくてはならない存在ではあると思うのですが、うちが、奈良県の南の「防波堤」くらいに思っています。「手芸専門」としては、(和歌山の)岩出くらいにしかお店がないですからね。

専門店としての役割

僕自身、生まれた時から家が毛糸屋さんなもんで、お店を継ぐとか興味があるないに関わらず、毛糸や手芸に自然となじんで来ているんですよ。小学生のころから店番もしていましたし、色の見方とかもその時代から、ボタンを選ぶのなんかも、本職の方がやっているのを傍で見ていました。

 

とても几帳面に陳列されている商品や生地。「繊細さ」が問われる手芸に通じます。

 

 

 

 

 

 

 

中学生にもなると、実際に毛糸を売ったりもしていましたしね(笑)。ですから、毛糸や手芸にまつわる知識も、昔からの積み重ねで、いる知識もいらない知識も自然と刷り込まれてくる。量販店だと、お客さんが本を持ち込んで、「ここをこの本のようにこういう風に編みたいんだけど?」というような相談にはなかなか乗ってもらえないですよね。でもうちは、もしお客さんが求めるものがなかったとしても、「この毛糸は扱ってないんですが、でもこの毛糸ならいかが?」のような提案ができるんです。そういったことが、「専門店としての役割」だと思いますし、時代は変わろうと、そういうお店でありたいなと思っています。たとえば、ズボンのファスナー1つとっても、落ちてこないように、ストッパーがついていたり、あと、ズボンのファスナーって、大概右手で下ろすでしょ?だから基本的にズボンのファスナーって、右にカーブがついてついているんです。この間、たまたまズボンのファスナーを付け直したっていう友人に会ったんです。量販店で付け直してもらったそうなんですけど、見事にカバン用のファスナーがついてました(笑)。友人が「付け直してもらったんだけど、よく落ちてくるねん、」って、そら落ちるやろ、って(笑)。だから、僕たちからすれば、量販店をけなす、というわけではないんですけど、専門的なことがわからずに、ズボンのファスナーを例として、付け替えたりしてることが不思議というか怖いです。ですから、量販店さんでは届かない部分をお手伝いする、それが「専門店としての役割」ではないかと考えます。

地域になくてはならない存在として

ただ、今はインターネット通販も普及し、同じような商品でも、インターネットのほうが安い場合も多いです。そういった場面では、もう正直にお客さんに伝えますね。あくまでうちの特徴、利点をお客様に伝え、ただ値段の差はありますよ、という風に。例えば、100円ショップが多くできてきた頃、一番売れなくなったものは「ゴムひも」なんですよ。でも、(お客さんが)一番早く帰ってきたのも、ゴムひもなんですよ。100円ショップの、ゴムひもの手軽さは魅力なんですけど、でもそれでは十分でない場合、じゃあどこでゴムひもを買うの?となれば、やはり専門的なお店になってくるんですよ。品ぞろえの点から見てもね。今でも多いのは、(専門的に)洋裁や、着物の仕立てなんかをしていらっしゃる方たち。そこに使うゴム1つ取っても、やはりうちに来ないと置いていない。仮にもしうちがなかったとしたら… そういうことを考えれば、「地域にとってなくてはならない存在」になってきたのかな… と思っています。「専門的なもの」を、置くことができるよう努力を続けている… お店の在り方とは、今はそんな感じです。

ー では、つぎのご質問なのですが、お店を続けていく中で、大切にしていることはございますか?例えば、ここだけは譲れない信念のようなものなど…

商売って、僕らが「売ってあげてる」とかお客さんが「買ってあげてる」とかそんなのではなくて、「50/50(フィフティフィフティ)」の関係ですよね。売り手とお客さんが同じ目線になる。どういうことかと言えば、お客さんの利益になるよう、僕らがお客さんに適切なアドバイスをして、その結果、僕らも利益をいただく。安ければよい、のではなくて、お客さんの立場に立って、これが信念なのかな?どうなのかな?とは自分でも思いますけど、でもまあ実際の話、そういうことですよね。

どんなかたにも楽しく手芸を

あと、我々はただ「物を売る」だけではなくて、その後を、手芸をどんな方にも楽しんでいただきたい。最近、手芸を、福祉的な観点、ということも考えるようになりました。手芸ってやはり手先を細かく動かす作業なんで、それによって痴呆やボケ防止にも一役買うことがあるんですよ。お年寄りに優しく、ということは別に信念でもない訳ですけど、手芸とはいつまで経ってもできるようなもの、また、手芸はどんな方にも楽しんでいただけるもの、その「楽しむ」ということのお手伝いをさせていただきたい。(うちに)買い物に来られるかたは、手芸を楽しんでやっている方ばかりなんで、あと、99%のお客さんは「目的買い」のお客様ばかりですね。目的のものを買って、そのついでにほかの品物を買ってくれる場合もあるのですが、すでに、手芸を楽しんでおられるかたに、如何に新たな情報発信をしていくか。ということも、今、大切にしていることですね。

ー ありがとうございます。お取扱いされておられる品目は、毛糸や手芸品のほか、ミシンも取り扱っておられるとのことですが、店頭におきまして、ミシンの販売においての需要は、実際どのくらいのものなのでしょうか?

今のお店をオープンさせた当時は、全国で、ミシンの売り上げがとても大きかったんです。ミシン自体の単価も高かったですし、一家に1台、といった需要もあったのでしょうね。数はさすが少なくなりましたが、今ももちろん買いに来てくれています。しかし悲しいかな、「ミシンを使えない」お母さんが多いですよね(笑)。ミシンが家にない、というご家庭も多いと思います。今、小学生~高校生くらいの子供がおられるお母さんは、家にミシンがない、というのが多いんではないでしょうか。でも、その世代のお母さんの世代ともなれば、ミシンを使うかたも多くいますね。(インタビュアーの)親御さんもそうではないでしょうか?

ーそうですね。古いタオルで、ミシンで雑巾を作ってもらってたりしていました

その世代以降となると、今の若いお母さんの世代ですね、女性の社会進出とともに、家で、ミシンを使って何かを作る、そういったことが減ってきたんです。女性にも働き口が広がり、自身で稼ぐことができたので、作らなくても(お店で)買えばいい、という感覚でですね。ですから、ミシンは買いに来るお客さんは一定数いらっしゃるんですが、よっぽど好きな方か、(仕事を)定年された方ですよね。あと今では、インターネットのメルカリで売るために、自分で服とかを作るかたですね。でも、ミシンの販売に関して、うちが自信をもっているところは、値段ではないんです。値段だけを求めるのなら、間違いなくインターネットで買ってください、と伝えます。でも、うちは、(ミシンを)買っていただく際は、時間をかけて、そのミシンで、制作ができるようになるまで、説明を行います。そういう時間がないお客さんに対しても、20~30分くらいの説明を行ったり、さらにそれも無理な方には、説明書のこの部分だけでも見ておいてください、ということを最低伝えるようにしています。値段だけを求められる場合は、どうぞインターネットで、でもうちは、その「信頼」というか、購入後の修繕や、アドバイスといった、アフターの部分ですよね。いわば、うちは「保守契約」付のミシンを売っている感じです。

ー そうですね。我々の商売においても同じことだと思います。続きまして、またお取扱されておられる品目のお話ばかりで恐縮なのですが、ネームの刺繍や、Tシャツへのプリント等も行っておられる、とのお話ですが、個人の以来のほかに、スポーツクラブ等、団体さんからの依頼もあるのでしょうか?

Tシャツへのプリント依頼や、刺繍といった依頼はよくいただきます。うちはそのTシャツ等の販売はしていないので、お客様の持ち込みで。ただ、今一番需要が多いのは、今五条ガスさんが着ていらっしゃるような、作業着への刺繍の依頼ですね。まあ、刺繍の依頼は、量販店等でもやっていることがあるのですが、字数が多いとできないそうなので、そういった類はうちに持って来られますね。あとは、自分が来ているこのポロシャツなんですが、これも普通に売っているものなんですけど、「クラフト館」と、ローマ字で刺繍を入れています。普通にポロシャツだけだと、何か安っぽく見えてしまいがちなんですが、こうやって刺繍を少し入れるだけでも、アクセントになると思いませんか?

ー そうですね。社長が着ておられる、胸の、「クラフト館」の刺繍の下に刺繍してあるのは、ウサギのキャラクターですかね?

はい(笑)。このキャラクターは、こちらでお店をオープンした際、作ってもらったんですけど、最初、買い物袋を作ってもらう時、僕が、袋にデザインする絵を考えてよ、とお願いした時、作ってきてくれたのがこのキャラクター(ウサギ)なんですよ。そこからずっと今まで… ということですね。自分も元々、こういった、布製品にに刺繍をする、ということをやってみたかったこともあって、この分野に関しては、いろいろお客さんのお手伝いを、楽しくさせていただいてます。そして、刺繍のほか、Tシャツ等にプリントする、プリンターもあるんですよ。

ー それは、アイロンのような方式ですか?

いや、これは「プリンター」なんですよ。まずは生地にアイロンをして、それをプリンターに入れて刷っていく、インクジェット方式ですね。これはA4サイズまでなら写真や文字のプリントも何でも簡単にできます。ただし、吹きつけのような感じなので、そんなに長持ちはしないんです。ただこのプリンターは持ち運びもできますし、1回きりのイベント等には適してますね。刺繍をやってると、お客さんから「プリントもできるの?」という問い合わせもよくいただくんです。ですから、「プリント」に関しても、今は幅広いお客さん(官公庁や企業など)から依頼をいただいております。やはりいろいろと新しいことにチャレンジしていかないと、ということですね。

 

布製品への、イラスト、写真のプリントはこのマシンにおまかせ!仕上がった製品は記念品にぜひ!

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 私どもも、以前のように「ガスを売っているだけ」では厳しい時代になりましたですからね。

そこもやはり、「人口減」ですよね。僕がここにお店をオープンした平成6年と今の時代と比べても、すごい減ってるんです。ですから、このままの商売を続けていくだけでは、必ずいつか先細りになる。うちは、毛糸と手芸だけではダメだと思っていたところに、たまたま中学校の体操服の販売に上手く入り込むことができて、さらに今、プリントとかの新しい事業にも取り組んでいるところです。

「糸」からは離れない

あと、インターネットで出店、ということも最近はやっているんですが、でも値段競争が激しくて、今のところは在庫処分、といった感じでしかなく、なかなか主力にはなりえないですね。あくまで、店頭販売というのが中心で在り続けることは、これから先も変わらないと思います。また、単純に業種を増やす、ということもこの先大事なことなんですけど、毛糸、刺繍、絹… 「糸」または「糸へん」からあまり離れたくないですね。さっき紹介した、プリントの分野だって「布」に印刷するものですし。ですから、なにか他のものを売ろう、というところにはまだまだ達していないかな?あくまで今をベースに、徐々に広げていくことからですね。

ー ありがとうございます。次の質問なのですが、毎週火曜日に、「編み物教室」をされていらっしゃるとのことですが、受講生の方はどれ位いらっしゃるのでしょうか? 

 そちらに関しては姉が昔からやっております。ここのお店以 外にも、橋本へ2件ほど、出張という形で教室を開いています。人数に関してはそうですね… 朝と昼の部に分けて開講しているのですが、朝の部が9名ほど、昼の部は5名程度、というぐあいですね。うちで糸を買っていただければ基本的には無料で参加できます。ただ、やはり年配の方が多いです。「余暇を楽しむ」という趣旨で、作ったものを着る、というよりは、あくまで「編むこと」自体を楽しんでおられます。あとはお孫さんに自分の編んだ服などをプレゼントするとか… 多い方で年間10着くらい作るんとちゃうかな…

ー 10着もですか!でも、どこにも売っていない、自分だけのオリジナルって本当に貴重ですよね!

ただ難しいのは、毛糸の値段も高くなっているのですけど、毛糸って、デザインで売るものではないんですよね。「素材」で売るものですからね。完成した服ではなくて、服にする前の「糸」を売っているわけですから。触り心地や編みやすさ、そういったところをPRして売るので、服を売ることとは全く異なるんですよ。

ー 毛糸から作った作品のイメージなんて、人それぞれですしね。

でも、うち(編み物教室)に来ておられる方は、結構上手な方ばかりなんですよ。ベテランぞろいで、それはもう上手に編んでくれます(笑)。

ー あと、お店のことについてもう少しお聞かせください。1日平均、どれくらいのお客さんが来られますか?

そうですね… いい時は1日80人くらい来てくれましたね。今はそんなに(お客さんが)来ることはないですね。いまはもう良くて30人くらいでしょうかねぇ… そして今は売り出しをしようが、何をしようが大して変わりませんしね。まあ、学校の入学シーズンになると少し増えますけどね。

ー 市外からも、お客さんは来られますか?

あまり大きな声では言えないのですが、市内、市外のお客様の割合でいえば、3:7、いや4:6くらいかな?いややっぱり3:7かな(笑)。

ー そうなんですね!それは意外です…

それはただ単に、手芸の専門店が、橋本にないことと、あとは人口の割合ですね。橋本は五條の倍近く人口がいますよね、ただそれだけの話なんですよ。

「繋がり」を大切に

でも、考えれば「扇屋」のバックボーンから、商売が続けていけるのも、仕入れ先にも恵まれてこそ、とのことですし、ですから、仕入れ業者さんとは、仲よく和気藹々と… 業者さんに対しては「買ってあげてる」ではなくて「売っていただいている」という謙虚な気持ちでですね。業者さんに対して「買ってあげてる」という気持ちだと、業者さんには、どうしても「売ったってあげてるのに」という気持ちになる。ですから、そういう考えは絶対に持たないようにしています。大阪の卸売業者で勤めていた経験からも、仕入れ業者さんの立場からすれば、いい商品を持っていくとしたら、やっぱり和気藹々と良いお付き合いをしているお店に持っていきますよね。仲よくしているところに先に声をかけようか、ってなりますね。だから、繋がり、という事はすごく大事にしています。業者さんだけでなくお客さん、こういった、五条ガスさんのこういった取り組みでお話しさせていただいていることも「繋がり」ですし、他に友人との繋がり… 「信頼関係」と「繋がり」というのは常に大事にしていかないといけないでしょうね。

ー おっしゃる通りです。「信頼関係」はどんなお商売をされるのにも、重要なキーワードですよね。続いてのご質問なのですが、お店のこれからの展望、この先こういうことがやってみたい、ということはございますか?

まあ、これから先も、お客さんの要望に応えることができるような品ぞろえは、どんどんしていきたいと思いますし、他店との競争ではなく、「共存共栄」ということを考えていきたいですね。最近、橿原市のイオンモールにも大きな手芸店ができたのですが、そのお店には、いい意味で頑張ってほしいなと思います。お話ししたように、手芸専門店が少なくなってきて、(お店を)する人もいない。業界自体も縮小していく中、そこで新しいお店に「種まき」してもらえれば、自分たちのお店にも戻ってきてくれるかもしれない。遠くまで行かなくても、こんなに近くにあったんだ、という感じにね。うちの店だけでは、ブームは生まれない。そこで新しい大きなチェーン店等すべて含めて、ブームというものが生み出されると思いますので、そういう部分においては、新しい同業のお店には頑張ってほしいですね。そういう動きからうちも頑張れるような感じで、業界全体の願いとしまして。

社長の考える「今後」とは

あとは、オリジナルの品物を制作して売る、ということですね。製造販売に近いことも将来できれば、と思っています。今、「布きれの見本」として制作した作品も、売るようにしています。昔はあくまで布きれの「見本」なので売ることはしなかった。でも、ミシンがないから作れない、そういったお客さんにはそれを買ってもらうという、製造販売のようなやりかたですね。そして、今までは見本の品物ひとつひとつに値段は書いていなかったんですけど、かばんやがま口や、ちょっと手軽に買っていただける品物には、たとえ製作したばかりでも、値札をつけています。製作した品物というのは、よそには売っていない一品ものばかりなので、そういった「出来合い」のものをもう少し伸ばしていきたいというところです。先ほどお話しした「糸」からはブレることがないように、「オリジナリティ溢れるものづくり」ということをこれからも取り組んでいかなければならないことでしょうね。ただ単に材料を売るだけではなくて。それが上手くいけば、たくさん製作して、それこそインターネットで売りさばける。仕入れたものを売る、ということだけではどうしても利益を上げるのは難しい。ですから、仕入れたものを売るのではなく、それを加工して売る、ということですね。それが実現できたなら、うちの今行っているインターネットでの商売の在り方も大いに変わってくるでしょうね。

 

 カラフルな生地に囲まれて、はしゃぐ、同行のスタッフ森子さん。思わず、「カワイイ」を連発(笑)

 

 

ー ありがとうございます。我々サラリーマンとは立場も違いますが、今のお話をお伺いして、通ずる点は多々あったと思います。大変勉強になりました。

 我々の商売もガス器具でもなんでも、販売の際のお客様への対応、ということはみな同じだと思います。五条ガスさんなら、ガスの知識を間違いのないようにお伝えすることが仕事であり、使命だと思いますし…

ー そうですね。それも私たちの大事な「使命」ですね。その「使命」を今一度かみしめて、日々まい進したいと思います。社長、本日はお忙しい中、貴重なお時間ありがとうございました。

(あとがき)

 国道沿いではないお店の立地、そして「手芸専門」という極めて限定されたジャンル。量販店やインターネット通販等、お客様の選択肢も多い中、「選ばれ続けるお店」として長く愛される「クラフト館」さん。なぜ選ばれ続けるのか。今回の取材を通して、社長の「地域にならなくてはならないお店になるため」をという志を目指してきた、そういう高い志が、20数年間もここでお店を続けられてきた所以なのだと感じました。そして、これからもその志は、「現在進行形」として継続されて行く事でしょう。

 

クラフト館

五條市五條3-1-23

営業時間 AM 10:00 ~ PM 7:00

定休日  日曜日