第13回 パン工房 ヤムヤム  前田 義和さん

 

「こだわる」というよりか「自然体」でさせてもらってます

 s-ヤムヤム

―パン工房 ヤムヤムさんがお店を始められるまでの経緯を聞かせてください。

(前田義和さん 以下同)僕自身がパン屋さんをしたいなって・・・ そこからです。高校卒業後、まず専門学校で1年間基礎から学び、その後宝塚で3年、滋賀で2年修行させてもらって、2001年、地元であるこの五條市でお店を開店しました。

―パン屋さんをしたいなっていうのは子供の頃からの夢だったんですか? 

いえ、そういう訳ではないんですが、きっかけとして僕が高校3年生の時だったでしょうか、「バブル崩壊」の時代だったんです。何だかすごいことになったみたい・・・という印象がありました。そこで単純にこれからは飲食業が堅いんじゃないかと思いまして。飲食業でも色々ありますが、あまり深く考えたという感じはなく直感的に「パン」が一番自分に向いてるかなって思ったんです。

―店名 yum yum (ヤムヤム)というのは・・・?

英語で、そして幼児ことばで「おいしい」って意味なんです。s-DSC00650そこには、子供に安心して食べさせられるものを作りたいという思いがありました。丁度僕も子供が産まれた時期、そしてオーガニックだとか有機、食品添加物、アレルギーの事などが取り上げられていた時代でもあったんです。ですが、それもあまり硬くこだわる感じではなく日々口にするパンを子供がおいしいね!って笑顔になれるような・・・そういう素朴で自然な感じでとらえてるんです。

―安心安全なものというとやはり材料ということでしょうか?

そうですね。できる限り自然派で、地元産の小麦、ライ麦、米粉、もち粉・・・都会のパン屋とは違って、この周りには美味しい水や、仲間の作る麦や野菜、果物が揃っています。地元産は安くて美味しくて食材として持ってる力が強いんです。主にそういった食材を使って安心安全でそして安く買っていただけるパンを作っています。

―アレルギーへの取り組みもされてるそうですね。

僕自身の子供が食物アレルギーで苦しんでいた事もあって、そこから乳・卵などのアレルギーでパン食を我慢している子供たちも安心して食べられるパン、「卵や牛乳が入ってなくても美味しいパン」を作ったんです。.

―材料へのこだわりやアレルギーへの取り組み、美味しいパンづくりの為に色々と考えておられるのですね。

でもね、そんなガチガチに捉えている訳ではないんですよ。素材に関してもできるだけ地元産で、天然でというだけで、作るパンの用途、特性によってそれ以外の素材も必要です。アレルギー対応パンも置いてますけど、それに特化した店ではありません。食べて、「あ、美味しい、また食べたい」って思う安全なパンを作ろう・・・s-DSC00620それだけなんです。最初からあまり前置きや説明を色々つけてしまうのではなく、ベースはパン屋さんとして、美味しそうだな、食べてみたいな・・から徐々に深まりそこから質問や、例えばアレルギー対応でこんなパンが食べたいなという要望があればできる範囲で応えていけたらという考えですね。あまり型にはめすぎるとパンが日常じゃなくなると思うんです。病院食でもサプリメントでもない、パンは日常口にする自然な食べ物ですから。

ですので「こだわる」というより「自然体」でやってます。

―パンの種類はどれくらいあるんでしょうか?

s-DSC00623多いと思いますよ。都会の店なら絶対数が多い分商品を絞れますし、経営的にもその方がいいかもしれないんですが、うちのお店では60~70種類くらいはありますね。s-DSC00617

 

 

 

―製造は店長がおひとりで?朝は早いんですか?あと、店舗での販売以外に卸しなどはされてますか?

妻とスタッフの方達にも手伝ってもらっています。
僕は朝4時半頃から製造にとりかかります。午前中にはその日の分を終えて、午後からは翌日の分の準備にとりかからないといけないんで。卸しは今はほとんどしてないですね。以前はずっとスタッフには「職人」というかたちをとって、その分卸しの仕事も多く請けてましたが、辞められるとひとり分の工程がぽっかり空いてしまって同時進行で進めていく製造ができなくなる等のリスクがあって困るんですよね。それで、色んな面を見直し、「職人」という枠を無くしスタッフはすべてパートにきりかえ、自分のできる容量で、やはりお店をいちばんにやっていこうと卸しも極力減らしたんです。パートさん達が時間単位で入ってくれて、製造や販売もサポートしてもらうというスタイルでやっています。

―たくさんのお客様が来店されてるようですね。なかでもサイクリストの方がよく来られてるようですが・・・

はい。そうなんです。サイクリングのブームというのもあると思いますが、ここってすごく立地条件がいいんですよ。金剛山を超えてくるというルートがあるんです。サイクリストの方は「坂」が好きなんです。逆に困るのは交通量が多いことなんです。そういった条件がいいので休憩場所としてよく利用していただいてますね。ガッツリ食事をとるとその後の走行に差し障るんですけど、その点パンは消化も早く、ほどよい糖分が後にエネルギーに変わるのでいいみたいですね。

―自転車を停める専用のハンガーのようなもの?も設置されてますが。

今、置いてるお店多いですよ。自転車ってやはり高価なものですし、サイクリストの方が多く来てくれるので必要かなと思いまして。実は僕も自転車乗るんですよ。やはりお店にサイクリストの方がたくさん来られるのを見たのがきっかけで・・・。
ですので、もう一歩踏み込んだところで連携がうまくとれればサイクリング用の部品とか機材とかの販売もちょっと考えてみようかなと思ってるんです。サイクリング途中での自転車の故障、トラブルに対応できたらと思ったりしてます。

―ばあくさんで石釜を使った焼き立てパンとピザを作るイベントをされてるそうですね。 

はい。「食の乱反射」略して「食乱」というグループがあるんです。この地域の「食」や「ものづくり」にこだわる農家さんや生産者で作ったグループなんですが、そのグループ内でのコラボレーションで始めたイベントなんです。
石釜で焼けたアツアツのパンやチーズの上にばあくさん特性のベーコンを乗せたピザといったように「パン」をメインとしたイベントを月に1回やってきてたんですが、少し趣向を変えてみようかということで、今はカフェをメインにした形で、ばあくさんが主軸となって開催されています。そのカフェで召し上がっていただくパンを作っています。

―「食乱」というグループでのイベントは他にもあるんでしょうか?

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はい。年に一度11月に「大食宴会」をやっています。今年は吉野川の川原で開催します。

 

―入口に「ノスタルジック街道」という看板がありますが、これは?

s-DSC00646s-DSC00647これは、お店を経営する何軒かの仲良しのグループで、何かできたらいいねというところから、名前を作って目的地になるような仕掛けをしていこうというものなんです。山麓線を走り、立ち寄ったり休憩したりしながらこちらを目的地としてもらえるような仕掛けを。
広告媒体として1件でやるより何軒か集まりいろんな意見を持ち寄った方が、チラシのクオリティも高まり、仕掛けも深くなり、予算も安くなる、何より目的が一緒だから一緒にしようと・・・そこから始まり作ったのが「ノスタルジック街道」です。

―困っていることは?

時間が足りないことです。
「てづくり」というのはやはりそのための時間が圧倒的にかかるんですよね。仕事としてこなしていかないといけない作業の中で当然トラブルも出てきます。機械であったり、業者間の仕入れの事であったり。それを責任者としてひとつひとつ判断し対処していかないといけない、当然の事なんですけど、そういう事が重なったりすると、時間がほしいなと思いますね。

―これからについての考えなどはありますか?

そうですね、日常をがんばること ですね。
僕にとってのパン作りはもちろん「仕事」であり「日常」なんですよね。生活に入ってしまっているもので、圧倒的に費やす時間が多い。なので、その日常をうまく取り入れていかないと。仕事ばかりでも息切れしてしまうので、メリハリは大事ですよね。だから定休日は完全にオフで、趣味の時間を楽しんだり。その中で他のパン屋さんに行ってみたり、和食、洋食、いろんなお店に行ってヒントを得る事もありますしね。主軸を守っていくだけでも大変、でありながら経営するにはやはり流行らないといけない、材料にこだわれば値段も上がるといったせめぎ合いはありますけど、ガチガチにならず、ほんとに素朴に自然体で「日常」である「パン作り」を頑張ることです。

前田さん、本日はありがとうございまいした。

 

パン工房 ヤムヤムさんのHPはこちらから

パン工房 ヤムヤム

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住 所    奈良県五條市田園3-20-6
電 話    0747-23-5530
営業時間 8:00~19:00
定休日  火曜日・水曜日
駐車場  有

 

 

 


☆スタッフHのすぽっとwrite☆

幼稚園の頃、母と出かけた帰りにいつも立ち寄ったパン屋さん。コロネが大好きでした。中学生の頃、近所のパン屋さんでは、板チョコデニッシュとの衝撃的な出会い・・・そして短大生の頃、学校近くのパン屋さんでよく買った、名前は忘れたけど、栗が入ったふわふわのパン・・・ほんとにパンは小さいころからいつも口にする「日常」です。
今回の取材で初めてヤムヤムさんを訪れ、衝撃的な出会いが!「プリンデニッシュ」。サクサクのデニッシュの上にカスタードプリン!絶妙の食感です♪