第33回 カットクラブ マニッシュ   オーナー 椋本浩司さん 

「今が一番好きやし、仕事してて楽しい。」そう自信を持って言える『天職』との出会い。

 

第33回 カットクラブ マニッシュ オーナー 椋本浩司さん

「趣味は仕事」と語ってくださった『カットクラブ マニッシュ』オーナーの椋本浩司さんにお話しをお伺いしました。

 

 

ーお店の成り立ち(経緯)を教えてください

ここそのものは昭和7年創業の、今現状では五條市で一番古い理容美容店です。
僕らがちょっと前まで・・仕事習ってUターンしてきた時は、まだ歴史上、古いお店は何軒かあったけど、みな廃業されたんで・・。
だから今、現存するなかで五條で1番古いお店です。

その頃からこのお名前だったんですよね?

その頃は、椋本理美容室やね。
ちょっとややこしいんやけど、今から7年前かな・・7年前の平成22年5月に現名称に変えてリニューアルオープンして・・

ここを建替えて?

うん。完全建替えて。

場所は元々ここで?

そうここで。
それで平成9年から15年間、田園でも「カットクラブ マニッシュ」をやってたんで、(建替えてから)2年程は2件やってたんです。

今現在、田園で『Hair Studio COLaFUL』が営業されていますが、姉妹店ですか?

カラフルさんはマニッシュの後を継いでやってくれてんねん。
だから姉妹店というよりは「カットクラブ マニッシュ」が田園にあって。(その頃)こっちは椋本理美容室やって。
「カットクラブ マニッシュ」が田園で平成9年にオープンして、平成24年くらいまでやったんかな。こっちを平成22年に建替えたやろ?
だから・・・両親はこちらで、私は田園で・・って。
平成22年にもうこっちを総合店(本店)にして、向うを支店にして・・。2年程そういう形でやってたんやけども。
今はカラフルさんを、まあ元の店長なんやけど、やってくれてるんで完全に手放して・・・・・。

独立しはったんですね?

そうそうそうそう。

 

ーそうなんですね。
それではその『マニッシュ』の店名の由来を教えてください

由来は僕が20代の頃、東京に居てて、その時仲良かった先輩が「マニッシュ」って原宿にあった店に変わって・・ほんで『その名前ええな!おれも帰ったらその名前付けるわ!』ってゆっていただいてきてん(笑)
だからそんな深い意味はないねん(笑)

 

ーお店の特徴(コンセプト)に 子どから年配の方まで とありますが・・

まあオーナーは毒舌ですけど・・(笑)
それでも・・ねえ・・それがいいってゆって、それが癖になってきはる人もいはるでしょ?(笑)

得意分野はねえ・・くせ毛の方のカット!
だから他のお店が投げ出した様な、どこ行っても上手いこといかへんねん、っていうお客さんが正直でうちで留まってくれます。

それはカット技術でくせを出にくくするんですか?

カット技術で。

うちの母親もくせ毛なのでよくゆってます!切る人によってハネ方が全然違うって!でもそれは熟練っていうか、ずっとやってこられた経験ですか?

そうそうそうそう。

でも人によってくせの出方が違うから難しいですよね?

うーん・・上手くよういわんのやけど・・だからそうやって困ったお客さんはお話してくれるんやね。「私、今までどこ行ってもだめやったのが上手いこといくようになってん」ってゆうてくれるんで。
そういうお客さんは正直『コア』なお客さん。

そうですね。結局みんな、いくらサービスが良くても技術が無いと行かなくなりますもんね

まあでも、ヘアカットっていうのはものすごい難しくてさ・・。
良かれと思ってやっても・・なあ。・・うまいこといかへんだり・・。
よくあるのが「揃えてってゆっただけやのになんでこんな短かなるの?」って。

イメージの共有が難しいですよね

そうそうそう。それがガチっと合えば・・・。
実際 五條で30年やってるんで、もう30年近く続けてファンでおってくれてる人もおるし。途中離れたり・・こんな田舎やから・・。
カットって、けっこうお付き合いできるやん。友達が美容師になっちゃったとか・・だからお付き合いで途中抜けるんやけど、また戻ってきてくれたりとか、っていうお客さんが多いかな。
そこは信頼があるから戻って来てくれはる・・お任せさせてくれはるお客さんが多いかな。

そう言える信頼関係はすてきですね。
では実際どんなお客様が多いですか?

全体としては、赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで来てくれる、総合ヘアサロンやね。どこかにターゲットを絞って、っていうわけじゃなく。でも正直オバちゃんが多いかな。(笑)それに、80歳くらいのおばあちゃんから、ものすごく言われるんですよ。「マスターに!」って、「他の人に触らせへん!」って(笑)

 

ーそんなおばあちゃんにもご指名を受ける椋本さんが、美容師を目指すきっかけとなったのは?

跡、とらなあかんという使命で・・別に好きじゃなかったんです。
20代・・19(歳)でこの仕事入ってんけど・・25(歳)くらいまではあんまり好きじゃなかった。で、最初親父にいわれて床屋さんに修行にいってんけど・・めっちゃ「ダッサーっ」て「いらんわー」ってなって。(笑)
それで、僕の友達の先輩のツテで、親父からいわれた修行が終わって家帰る時に、「帰りたない」って「美容室行かせてくれ」ってゆって、それで東京行って・・・。

そこでいろんな事がありました?

刺激もあったよね。
でも現場でやってることは一緒やなあと思ったけど。
ただプライベートでやってることは全然違ったけど(笑)

 

ーそうなんですね(笑)でもそれでいて、あまり好きじゃなった美容師のお仕事を続けて来られたのは、何か心境の変化があったからでしょうか?

やっぱり奥が深いんで。さっきのくせ毛の話でも、ヘアーカラーの話でも、究極の答えが分かったと思ったらもう次の問題できてくるんで。こうやってこの仕事始めて35年やってても常に新しいから・・・。
だから・・ちょっと言い方を変えると、最初は嫌いやったけど・・今が一番好きやね。この仕事。

へぇ・・それはすごいです!

頂点が過ぎたんじゃなく・・・。でも技術とか目とかはついてこうへんねん。でも、仕事の奥行とかを知ってくるんで、今が一番好きやし、仕事してて楽しい。

なかなかモチベーションって保てないし下がっていく一方なのに、それがずっと上がっていくってすごいです!!

だから最初だいぶ低かってんやろうね(笑)
もっと早よ気づけよって!30(歳)、40(歳)でピークなれよって!(笑)

いやぁ!でもそれはすごいです!年齢を重ねてその仕事が好き、って言える仕事に就けてる人って居てないと思うんですよ・・。
だからすごくうらやましいです!

 

ーところでこの写真は・・?

これは全国大会の審査員・・。10年前にいただいた役職なんやけど。
奈良県の代表で「全理連中央講師」っていう役職をいただいてて・・奈良県で一人やねんけど。

ちゅうおう講師・・?それはどんな役職ですか?

理容組合の方なんやけど、まぁゆったら、全国のエキスパートを東京へ集めてシンクタンク(特定分野の政策立案や経営戦略)じゃないけど技術的なシンクタンクを作って、東京で勉強してもらって、そしてまた地方にいろいろ教えてあげる・・。
だから2・3か月に1回東京行ってるんねんけど、そこでまた地方の連中と、東京の連中と交えて話をしてると、面白いんですよ!話がつきない!(笑)
それで、2010年、2012年全国大会の審査員をさせてもらって・・。

これを審査するってすごい難しいですよね?非日常っていうか・・。
これはテーマに沿ってですか?

大きなテーマはあります。

そうなんですね。でもこれって感性じゃないですか?その人の。だからそれを人が審査するってすごい難しそうです。当然好き嫌いも出てきそうですし・・

感性プラステクニック点やね。

こんな特異な髪形をしててもすぐにわかるんですか?

うーんとねぇ・・。
やっぱりこういう束感がねぇ・・テクニックを持ってる人が創ったら(わかるねぇ)なんちゃっての人と上手い人(の作品)が横に並ぶと全然違うんですよ。

 

ーそれでは美容師をしていて印象に残るお客様やエピソードがあれば

そうやね・・怒られ続けて何十年(笑)・・今でも、あぁ上手いこといかへんだな・・・っていうのはあるよね。
・・こういうこと、ほんまはいわへんのかもしれんけど・・そういうとこ・・クッと胸にトゲがささったよな・・・そういう時は・・1日ブルー・・です。

でも答えがないじゃないですか。これが正解って・・だから余計に難しいのかなと・・

今ちょうど、同世代の子供らが結婚する年齢になってきてるんで、その結婚した娘さんが、旦那さんもここでカットしいってゆって連れて来くれるとか。そういう親・子・孫の代で繋がってお客さんでいてくれてる、っていうのはすごいうれしいね。
30(歳)前後の時に、もっとファッション的に追及してた時とはまた違って。うちの子ら(従業員)にもよく言うねん。
髪っ切ってくれたり髪染めてくれたりするもの、どこのお店でもしてくれるなかで、うちを選んでくれる・・・もうその嬉しさの質が、ちょっと若い時と今では違う、っていうんかな。
だから上手いから来てくれる・・・それはうれしいんやけど、ここに任せといたら大丈夫やねん、っていう人ほど、やっぱり一番うれしいよね。

必要としてくれてるんですね・・。人としてっていうところですよね・・。いくら技術があってもやっぱり合わない人、合う人ってありますからね

もう行きたくないって思う所もあるやろうしな。

でもそうやって親・子・孫まできてくれはるって・・

うれしいね。ありがたいし、やっててよかたなって。

わたしも美容院行くときは特別な気持ちで行きます。行った時より絶対きれいになって帰してくれはるから・・・だから特別なんです(笑)デートに行くみたいな(笑)

あーそうやな。絶対そうやから、緊張しすぎてしまうやんか?だから、そういう気持ちを気楽にしてあげたい・・・。
でも、女の人にとって美容院行くときって綺麗になりたい、イメージを替えたい、っていう『~したい』っていうのは絶対あるんで、それをこう・・気持ちを許せる人にやってもらって、後は任せといたらええわ、っていう様なスタイリストになりたいな、って思ってたら・・もう年やねんけどな(笑)

 

ーこれからの展望をお聞かせください

そんな若い子ちゃうねんから・・(笑)

いやいや!今が一番楽しいときなんですから!(笑)

そうやなぁ・・お客さんもわがまま言うけど、俺もわがまま言いながら・・商売商売じゃなく、すごく密着して仕事していきたいな。
お客さんと深くかかわって・・・。

 

ー最後に五條について思う事をお聞かせください

静かで穏やかな町であってほしいな、と思う。
でも、そうしてるとどんどん衰退していくし・・。
ほどほどに活気もあってほしいねんけど・・静かな田舎でえーんちゃうん、って思う。でもそしたら人おれへんようになるしな・・。
それでも、五條生まれでよかったなって。だからこの町が変わらず・・緑豊かで綺麗な水の吉野川が流れてる・・・そんな緑と水が豊かな五條であってほしいと願ってます。

 

椋本さん 本日は有難うございました。

 

 

 

カットクラブ マニッシュ

住所   奈良県五條市須恵3-3-16
TEL  0747-22-2883
FAX  0747-22-2883
営業時間 全日9:00~19:00
日曜9:00~18:00
定休日  毎週月曜日、第2月・火曜
連休、第3日・月連休
駐車場  有

 

 

 

☆スタッフ森子のつぶやき☆

取材のアポを取りに行ったとき・・
一見、厳しそうなオーナー様の雰囲気にのまれたまま、取材当日を迎え・・。しかし、だんだん話を進めるうちオーナー様のペースにはまり(笑)美容師にあこがれを抱いていた、わたしにとって貴重なインタビューとなりました!「今が一番仕事が楽しい!」と言い切る椋本さんの誇りに満ちたその表情が、とてもうらやましく、嫉妬さえしてしまうような感情とともに、自分にとっての仕事の意味合いを考えさせられました。

でも

「今 僕のいる場所が望んだものと 違っても 悪くはない
今 僕のいる場所が探してたものと 違っても 間違いじゃない
きっと答えは一つじゃない」 ♪by『Any』

と 大好きなミスチルの歌詞に擬えて

たとえなりたい職業に就けていなくても、そこで輝ける自分になりたい・・・そう思う初老まっしぐら森子・・・がんばろー(笑)